阪急文化財団ブログ

NHKドラマ「経世済民の男 小林一三」のトリビア 第7弾

ドラマの再放送も決まりましたので、久しぶりにドラマトリビアを。

後編の冒頭と結末で描かれていた一三さんのスピーチ。
あれも実話を元にしています。1956年12月29日のことでした。
『小林一三日記』には次のように記されています。

「十時すぎ東宝パーチーにゆく、盛況也。
池部と森繁両君に強要されて一場の私の夢を語る。
十一時半帰宅、疲れたり疲れたり。」

「十時」は夜の十時です。
「池部」は池部良さん、「森繁」は森繁久彌さんのことです。

お二人とも東宝を代表する人気俳優でした。
お二人が共演している映画で私のお気に入りは、
『サラリーマン忠臣蔵』(続編もあり)ですね。
忠臣蔵の世界を現代社会に置き換えたパロディ作ですが、
脚色が見事で俳優陣も豪華です。DVDにもなっていますよ。

それはさておき、実際のスピーチの内容は
どのようなものだったのでしょうか?気になりますね。

実は、これを教えてくれる資料があります。
『小林一三翁の追想』に収録された
「最後の演説」という追想です。
筆者は森岩雄さん、当時東宝専務取締役で、
パーティーの会場にもいらっしゃいました。

この追想の中で、一三さんのスピーチの要旨が
身振りや表情とともに説明されています。
ドラマとの共通点もあってとても興味深い内容です。

『小林一三日記』も『小林一三翁の追想』も
池田文庫でご覧いただけます。
お近くの図書館にもあるかもしれませんね。
ぜひ手に取って頂ければと思います。


NHKドラマの再放送は11月3日です。
文化庁芸術祭参加作品だそうで、
受賞されたらいいなぁと期待しております。

(学芸員Y)

秋季展「秀吉の時代 ー桃山美術の光と影-」開催中です

10月10日(土)から、秋季展「秀吉の時代 -桃山美術の光と影-」が開幕しています。

この展覧会は、久しぶりに重要文化財「豊臣秀吉画像」が展示されています。
よくテレビや歴史の教科書でも登場する、
秀吉と言えば?という時にすぐにイメージとして浮かんでくる秀吉像は、
当館の秀吉像という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

秀吉

この秀吉像、よく使用されるのは、実は顔回りだけなことが多いので、
全体像を見たことがある、という方はもしかしたら少ないかもしれませんね。

また、よく作品をみていただくと、いわゆるバストアップといわれる部分と、
それ以外の部分の描き方に大きな差があることがわかりますか?

顔部分は非常に丁寧に描かれているのですが、
それとは対照的に胸より下はかなり雑に描かれていますし、
衣装なども飾り気がなく、上畳にも乗っていません。

この絵の顔の部分は「紙形」と呼ばれる別の紙を貼り付けてあります。
そして下の部分には「これがよくに申よしきい(貴意)にて候」と書かれています。
これにより、何枚か描かれた秀吉像の下絵の中から、
最も似ているものとして選ばれたのがこの図であることがわかります。
つまり、この作品は画稿、下図ということになります。

テレビや本などで顔はよく見るけど全体を見たことがない、
あの秀吉を見たい!そんな人は是非、12月13日まで開催中の本展にご来場ください!

もちろん、秀吉以外にも、桃山時代の光と影を象徴する作品を展示しています。
この機会にお見逃し無く♪


(学芸員A)

2015年友の会見学旅行に行ってきました♪

ようやく秋めいてきた10月3日(土)、今年も友の会の見学旅行を無事に開催いたしました。
毎年行き先が違うのですが、今年のメインは兵庫県美方郡香美町にある「大乗寺(応挙寺)」です。

兵庫県美方郡香美町はもうすぐそこが日本海という場所ですから、
大阪から向かうには結構遠いのが難点。

途中の出石でまず近畿でも最古の芝居小屋「永楽館」を見学しました。
明治34年に建てられた当時のままの姿を見ることが出来る大変貴重な場所です。

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この中で現在でも営業されていらっしゃるお店は大分数が少なくなっているとのこと。
時代の移り変わりを感じます。

お昼ご飯は出石と言えばお蕎麦!とのことで、蕎麦御膳を頂きました。

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そして、再びバスに揺られてようやく「大乗寺(応挙寺)」に到着しました。

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寺内は山岨副住職にご案内いただきました。
わかりやすく詳しいご説明はとても勉強になりました。
参加者の方々もじっと耳を傾けていらっしゃいました。

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特別な場所も見学させていただけたので、会員様も楽しんでいただけたのではないでしょうか。

途中で休憩のために道の駅但馬まほろばに立寄って帰路につきました。
長いバスの旅でしたので、お疲れが出られてないといいのですが。

阪急文化財団友の会では年に1度こういった見学旅行を行っています。
是非ご入会いただいて、ご参加ください♪

(学芸員A)

平成28年逸翁白梅茶会の申込みを開始しました

平成28年の逸翁白梅茶会の申込みが10月1日より始まっております。
この「逸翁白梅茶会」は、小林一三(逸翁)の命日である1月25日に毎年開催する追慕茶会です。
何があってもこの日に茶会を行いますので、
来年1月25日は月曜日で本来ですと休館日ですが特別に開館します!
(翌26日を休館します)

逸翁が生涯かけて集めた茶道具の中より選び出して行う茶会で、
本来ですとガラスケースの中でご覧いただくものを身近でご覧いただき、
かつご使用いただく大チャンスです。

お茶会って難しそうだし、お茶の心得なんてないし・・
そう思って悩まれていらっしゃるならば、どうぞご心配なくお申し込み下さい。

逸翁白梅茶会は気軽にお茶を楽しんでいただくことを提唱した逸翁のモットーの通り、
気軽なお気持ちで参加いただければと思います。

三千家の先生方に毎年持ち回りでご担当いただいておりますが、
来年は表千家生形朝宗庵社中にご担当いただきます。
生形先生は、逸翁の茶道の師であった生形貴一宗匠のお孫さんに当たられ、
逸翁とも非常に縁の深い先生です。

詳しい申込み要項はこちらの「逸翁白梅茶会」のページをご確認くださいませ。

皆さまのお申し込みをお待ちしております♪

(学芸員A)

NHKドラマ「経世済民の男 小林一三」のトリビア 第6弾

松永安左エ門翁篇も先だって26日に放送が終りましたね。
この「経世済民の男」シリーズもこれで終わりなのかと思うと、少し切なくなります。

「電力の鬼」と呼ばれた松永安左エ門翁は、
先の二名とは違って、ある年代だけを切り取ったドラマになっていましたね。
個人的には、生涯をダイジェストで追うのも、
この様に切り取って採り上げるのもどちらも良いところ、難しいところがあるなぁと思いましたが、
安左エ門翁の電気事業に対する強い思いは表現されていましたね。
どの回もこの放映回数では物足りない!そう感じられたのではないでしょうか。

ドラマの中で、お茶を楽しむシーンや、茶碗を購入しようとして奥さんに止められていたシーンがありました。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、この安左エ門翁と一三翁は茶友で、
それも親友と言っていいくらい仲良くしていました。

若い頃には、実は一緒に牢屋に放り込まれたこともあるってご存じでしたか?
この時、一三翁は飄々としていたのですが、それをみた安左エ門翁が驚いたということが自叙伝などに書かれています。
元々、安左エ門翁はお茶に興味がなかったんです。
お茶に没頭する一三翁を呆れて見ていた安左エ門翁ですが、後には茶道に没頭するようになり、
茶人垂涎の的であった「佐竹本三十六歌仙切」を手に入れた際には、
その事を知った一三翁が「いっぱしの茶人になった」と述べたことなどもありました。

ドラマでは一切交流が描かれなかったのが少し残念でしたね。
なかなか難しいかもしれませんが。

この絵は安左エ門翁に一三翁がお土産にもらったものです。
アマン=ジャンの「少女像」です。
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また一三翁が亡くなった時に安左エ門翁からコウ夫人に届いた追悼の漢詩はこちらです。

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どちらも二人の交流を物語る作品です。

後、もう一つ、ドラマの中で安左エ門翁がその他の委員達とお茶を飲んでいたシーンなどで使われていた建物は、
三重県の桑名にある「六華苑」という建物なのですが、
この六華苑は諸戸清六氏という方の旧邸で、和洋折衷のとても素敵な建物です。

初代の諸戸清六氏と一三翁は若い時代に実は交流があります。
三井銀行の大阪支店に勤務中に、諸戸清六氏と出会った若い一三翁に、
諸戸氏は勤務振りを誉め、袂から桑名名産の蛤のしぐれ煮を下さったそうです。
安左エ門翁と二代諸戸清六氏は茶友でもありましたから、
この六華苑でドラマ撮影が行われたことで、
時空を超えた交流があったことになりますね。

安左エ門翁との交流は、2年前に展覧会でもご紹介しました。
茶の湯交友録 小林一三と松永安左エ門-逸翁と耳庵の名品コレクションという図録でご紹介しています。
よろしければご覧ください♪

(学芸員A)