阪急文化財団ブログ

美術品の修理について

先日、当館の収蔵品である、とある絵巻の修理状況の打合せに行ってきました。
美術品は時代を経ているため、大切に保管していても、
徐々に劣化してしまいます。

一口に劣化といっても種類はさまざまです。
虫によるもの、光りや水、糊が剥がれたり、シミが出来たり。

そのため、私たち学芸員の仕事では、劣化にいち早く気付く事が出来るように、
展示する際や、折々に作品のコンディションをチェックすることはとても大切です。

今回の修理作品は絵巻物です。
絵巻物は構造として紙と紙を糊で繋いであれほどの長さにしているのですが、
絵や文字が書かれている「本紙」と呼ばれている紙を普段皆さんは見ておられますが、
実はあの紙は1枚だけではなく、その裏には裏打ちと呼ばれる本紙を補強するための紙が貼り付けられています。

今回の修理は大掛かりな修理になるので、
この裏打ちを外してまず1紙ずつばらばらの状態にして、
新たな裏打ちを施してもらい、また元の巻子の状態に繋ぎ合わせてもらいます。

この裏打ちの紙の色を微妙な色の違いによって本紙を表面から見たときの色合いがかわるので、
とても重要な打合せでした。

この作品が直って当館に戻ってくるのはまだ先のことになりますが、
また皆さまにお見せ出来ることが楽しみです。

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美術品の撮影

今日は撮影中の一コマをご紹介します。

展示図録に掲載するためや、作品保全のためなど、
様々な観点から収蔵美術品のデジタル撮影をここ数年執り行なっています。

大体年に3~4回程度の撮影を実施するんですが、
どんどん撮影機材に工夫が加えられていって、最初の頃に比べるととてもスムーズになりました。

昔はフィルム撮影でしたが、今ではデジタル撮影です。
撮影したその場で状態がわかるので撮り直しなどのロスがないことと、
微妙な角度の違いなどもすぐに調整出来るのでいいですね。
もちろんフィルムにはフィルムの良い点はあったわけですが。

掛軸などの平面の作品は、角度というものの違いは出ませんが、
茶碗などの立体の作品は、ほんの少しカメラの高さをかえたり、
作品の振り方を変えてみたりするだけで、かなり印象が変わってしまいます。

この辺りには撮影を担当した学芸員の好みが出るところでしょうね。

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写真はいつも撮影でお世話になっている会社の方です。
美術品の撮影前にカラーチャートの撮影をしているところです。
私がカメラを向けたので、照れ笑いを浮べられています(笑)
(※掲載許可はいただいています!) 
今日撮影したのは、呉春の「松下游鯉図」を始め、屏風などです。 呉春の作品は比較的ポジフィルムでの撮影が進んでいたのですが、 少しずつデジタルでの撮影を行っている途中です。 なかなか学芸員が普段どんな仕事をしているかよくわからない!という事を、 昔言われたことがあったので、今日はご紹介でした♪ (A)

逸翁白梅茶会開催しました♪

1月25日の日曜日に無事に今年の逸翁白梅茶会を終えることが出来ました。

毎年非常に寒い時期ですから、お天気だけが心配なのですが、
今年は天気もよく、また幸いなことにそれほど寒さも厳しくなかったのでよかったです。
昨日の月曜日はかなり雨が酷かったので、一日ずれなくてよかったですよね。

・・・来年もこの調子でいってほしいなぁと切に願うばかりです。

今年のお道具組は、昭和30年の初釜のものでした。
写真は「青磁貼花牡丹文不遊環花瓶(せいじちょうかぼたんもんふゆうかんへい)」です。

2017

割れたものを金継ぎしてあります。
床に置いて牡丹を生けて頂いたら、とても堂々と立派に映えていました。

この年が未年だったのですが、逸翁が亡くなったのは昭和32年ですから晩年のお茶会ということになります。
(今年の茶会記はこちらから)

釜など一部のお道具は、実際に使用することが難しいものもあり、
会記に少し手を加えていますが、基本的には逸翁の考案したお道具組みのままです。

実際に逸翁がどのようなお道具で茶会を楽しまれたのか、少しでも体感頂ければと思います。

来年のことを言うのは気が早いですが、来年は「申」年ですね。
猿にちなんだお道具が登場すると思いますので、お楽しみに♪
申込み等については、夏以降に正式にお知らせいたしますが、
今年と同じ時期からとなる予定です。

しつこいようですが、来年の逸翁忌も晴れて穏やかな一日になりますように。


なお、ただいまは美術館は、
早春展「神さま仏さま -祈りの美術-」を3月15日まで開催しています。

記念館は、
「旅するTAKARAZUKA 小林一三 海外公演の夢」を3月29日まで開催します。

終了日が異なりますので、ご注意くださいませ。

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早春展いよいよ開幕しました!

早春展「神さま仏さま ~祈りの美術~」が本日から開幕しました。

展示室の様子を少しだけお届けしますね。

まずは「十二天図」のうちより「梵天図」がお迎えします。

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なかなかの迫力ですよね。
夜道で見たらちょっと怖いかもしれません(笑)

展示はキリスト教美術、神道美術、仏教美術のコーナーでわかれています。
昨日内覧会をしていたところ財団職員ですら、
「え?仏像とか収蔵してたんですか?!」と聞かれるほど、
久しぶりの登場の作品もたくさんあります。

宗教美術か~というと難しいもの?と思ってしまうかもしれませんが、
難しく構えていただく必要は全くありません!
どうぞ気軽な気持ちで、ふらっとご来館ください。

早春展は3月15日(日)まで開催します。
御期待ください!

(A)

展示作業ってどんな感じ?

今日は展示作業中の一コマをご紹介します。
あまり皆さん見る機会がないですよね。

今回早春展で展示する作品の一つです。
箱から出すとまずこのような感じにぐるぐると包まれています。

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これだと"誰"だかわかりませんね。

もう少し開梱してみます。

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ちょっと顔が出てきました。
この段階でわかる方もいらっしゃるかもしれませんね。

正解は・・・

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聖徳太子でした!

箱の中では厳重に梱包されているので、少し開けただけではわかりません。
少しずつ開梱して展示されている状態に近づいて行くというわけです。

この作品は17日から開催の早春展「神さま仏さま ~祈りの美術~」にて展示しています。
是非、実物を見にご来館ください!

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