阪急文化財団ブログ

『阪急文化研究年報』第10号刊行しました

学芸員による調査・研究の成果を発表する『阪急文化研究年報』第10号を刊行しました。

内容は以下のとおりです。

仙海義之 「博物館経営に係る経営資源とサービスとの連関」

宮井肖佳 「日本画家・鈴木華邨について -新発見資料「鈴木華邨旧蔵資料」(石川県立歴史博物館蔵)調査を踏まえて-」

正木喜勝 「箕面有馬電気軌道の月刊広告絵葉書と新聞広告 -『山容水態』以前の箕面公会堂・宝塚新温泉を中心に-」

竹田梨紗 「連載(十) 逸翁美術館蔵「芦葉会記」(昭和二十五年)」

閲覧ご希望の方は池田文庫にお越しいただくか、お近くの公共図書館や大学図書館にお尋ねください。

池田文庫の本棚放浪記【第30回】~修復報告・宝塚歌劇ポスター~

 池田文庫の資料の独自分類を紹介するシリーズを一旦中断しまして、今回は修復作業から戻ってきた、一枚の宝塚歌劇公演のポスターについて、ご紹介させていただきたいと思います。

 

 

 このポスターの元の持ち主は内海重典氏。ポスター中に、『ファイン・ロマンス』の作・演出者として名前がみえます。

 内海重典氏(1915-1999)は、『南の哀愁』『ラ・グラナダ』などの作品で知られる、昭和の宝塚歌劇の代表的な演出家の一人。宝塚の外でも、万博やポートピア'81といった大イベントの開会式を手がけたことでも知られた人物です。

 

 ポスターは、長く折りたたまれた状態だったため、折り目部分が特に弱り、触れるのも開くのも恐くてできない状態でした。写真からも、その名残がお分かりになるかと思います。

 修復作業では、和紙による裏打ちと、劣化をくいとめる脱酸処理がほどこされ、みちがえた姿で戻ってきました。

 

 大きさは縦120cmあまり。池田文庫が所蔵するポスターの中でも、かなり大きな部類です。

 その半分ちかくを、タカラジェンヌの晴れやかな笑顔で占めています。明快で迫力ある構図。高く掲げれば、遠くにいる人の視線もひきつけたでしょう。

 デザイナーは、当時東宝で活躍していた土方重巳氏。のちにはNHKで放送され人気を得た人形劇「ブーフーウー」の人形デザインを手がけた人物です。

 

 このポスターで宣伝されている公演は、ある特別な意味をもっていました。

 年の記載はないですが昭和22 (1947)年4月公演、終戦から2年近くになるころです。会場は東京・有楽町にあった、日劇(にちげき)の愛称で親しまれた日本劇場。お詳しい方ですと、これでピンとくるかもしれません。

 実はこちら、終戦後はじめて東京で行われた宝塚歌劇公演のポスターなんです。東京公演は、昭和19年1月以来でしたので、およそ3年ぶりのお目見得。ホームグラウンドの東京宝塚劇場はGHQに接収されていたため、再開公演は日本劇場で行われることになりました。

 宝塚大劇場では1年前からすでに公演が再開していました。その様子を耳にして、宝塚歌劇団の上京を今か今かと待ちわびる人々にとって、このポスターは「東京でもいよいよ!」という、うれしい知らせを届けるものだったんです。

 

 時代背景や、当時の人々の気持ちを想像しながら、このポスターを見ると、ちょっと違って見えてきませんか?

 

 こちらのポスターも撮影を行い、いずれ、阪急文化アーカイブズで公開の予定です。

 

 

 

(司書H)

池田文庫の本棚放浪記【第29回】池田文庫の独自分類 ~宝塚歌劇編 その2・年史グループ~

はじめる前に、ちょっとだけ前回(第28回)のおさらいです。池田文庫では、宝塚歌劇関連の「図書」に属する資料群を次のように分けています。

 

775-T/A          年史

775-T/C          写真集

775-T/D          脚本をまとめた本

775-T/E           主題歌などをまとめた楽譜本

775-T/F           単行本

775-T/G          原作漫画

 

この大枠の話で、前は終わってしまいました。今回から、いよいよ個々の資料群のご紹介へ入っていきたいと思います。

 

■年史グループ(775-A/A)

宝塚歌劇団創立○十周年の節目の年に、それまでの歴史をまとめた本が出るのが、恒例となっているのはご存知でしょうか?

これまでタカラヅカの歴史に言及した本はたくさん出版されてきました。しかしこれは、宝塚歌劇団による宝塚歌劇団の歴史の本。タカラヅカの調べものの定番アイテムの一つです。池田文庫では、あまりに頻繁に参照されるので、グループとして固めて配架しています。

 

直近のものは、100周年だった2014年に発行された「宝塚歌劇100年史 虹の橋渡りつづけて」。ご覧になったことのある方は多いかもしれません。

 

 

100年史は、「舞台編」と「人物編」の2冊構成です。

「舞台編」は、宝塚大劇場、東京公演、バウホール、地方・海外公演等々の舞台記録集、賞歴、年表などを掲載しています。

「人物編」は、1期生から99期生の生徒紹介に加え、スタッフ紹介、宝塚大劇場公演のポスター一覧、出版物紹介などが載っています。

情報が見やすく整理され、抜群に使い勝手の良いデータブックです。池田文庫にあっては、タカラヅカの雑誌、公演プログラムなど、「当時の資料」にあたるための索引としても、とても役に立っています。

 

100余年の歴史の中で出た年史は、もちろんこれだけではありません。

20周年と40周年、以降は10年ごとに発行されてきました。新しい年史には、最新10年分の情報が加わります。だからといって、古い年史が用済みになるというわけでは、決してありません。「それを調べるには、○年史が便利」「○年史にしか載っていない」ということが、たくさんあるんです。

 

 

たとえば草創期について調べたいならば、20年を1冊かけて語る20年史が、濃い情報をもっています。

機関誌「歌劇」が休刊していた戦中期については、40年史や50年史の年表は、貴重な情報源です。

写真から歴史をたどりたい方には、大きな図版がたくさん載った80年史が読みやすいかもしれません。

 

ひとくちに年史といっても、それぞれに特色をもっています。

知りたいことを詳しく載せているのはどれか。調べたいことに便利な形式をとっているのはどれか。古いものから新しいものまで、ぜひ一度手にとってみて、ご自身の調べものに合うものを見つけていただければと思います。

 

(司書H)

池田文庫の本棚放浪記【第28回】池田文庫の独自分類 ~宝塚歌劇編~

池田文庫の所蔵する資料を調べるのに役立つ蔵書検索

前回から、キーワードではなく、主題から本を探す方法を紹介しています。ちょっと専門的なお話になりますが、より深く池田文庫の資料を探索したいと思っておられる方の、ご参考になりましたら幸いです。

 

池田文庫で特に収集に力を入れている「小林一三」「宝塚歌劇」「阪急」に関する本は、池田文庫ならではの独自分類をもとに細分化しているのは、前回ご紹介したとおり。

今回からは、その中でも「宝塚歌劇」に関する本を、池田文庫ではどう分類しているのかをご紹介したいと思います。

 

まず、宝塚歌劇関連資料を、大きく次の二つに分けています。

 

① 逐次刊行物

雑誌

公演ごとの発行物(プログラム、脚本集、主題歌集など)

 

② 図書

それ以外の資料

 

「逐次刊行物」に属する資料がどんなものかは、イメージしやすいのではないでしょうか。

こちらは、調べたい人物や事柄、演目、劇場、時代などからの検索が調べやすいと思います。池田文庫で作成している雑誌記事索引では、宝塚歌劇団の機関誌「歌劇」「宝塚グラフ」の、どの号にどんな記事が載っているのかも調べることもできます。

 

問題は②の「図書」に属する資料です。こちらは具体的にどんなものがあるのか、わかりにくいと思います。キーワードがうまくヒットしなければ、本のタイトルの一覧をみて読む本を決めたい。そう思われるかもしれません。そんなときに試していただきたい方法をご紹介します。

 

 

上は宝塚歌劇関連資料の棚より。これらの本の背ラベルの一段目はすべて「775-T」となっています。

池田文庫では宝塚歌劇関連と分類した資料には、「775-T」という分類記号を付与しているんです。

 

さて、ここで池田文庫の詳細検索ページ へ。分類コード欄のプルダウンメニューから「775-T」~「775-T」を選んで、検索ボタンをクリックすると、池田文庫で宝塚歌劇関連と分類した資料がズラリとでてきます。

 

「図書」は1600件超と出ます。こちらは今後も増えていきます。数が多くて順に見ていくのは大変です。そこで、もう一段こまかい分類をお伝えします。

宝塚歌劇関連の図書を次のグループにわけています。

 

775-T/A          年史

775-T/C          写真集

775-T/D          脚本をまとめた本

775-T/E           主題歌などをまとめた楽譜本

775-T/F           単行本

775-T/G          原作漫画

 

例えば、年史グループの本の一覧を出したいとき。詳細検索ページ の、今度は請求記号の欄に、775-T/A ~775-T/Aと入力してみて下さい。年史グループに属する本の一覧がでてきます。写真集以下の資料群も同様にそれぞれの記号を入力、検索すると、一覧がでてきます。

ここで、それぞれの資料グループの紹介に入っていきたいところなのですが、今回はこのあたりで。次回につづきます。

   

(司書H)

池田文庫の本棚放浪記【第27回】池田文庫の独自分類 ~小林一三編~

 新型コロナウイルス流行のため、昨年より池田文庫は完全閉架式の図書館として運営しております。受付で利用したい資料を指定していただき、司書が出納する方式です。本を手にとって選びたいという方々にはご不便をおかけしておりますが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

 

 完全閉架式の図書館では、本と利用者をつなぐ蔵書検索(OPAC)は、ますます大きな存在です。

 調べたいことに関するキーワードでの検索は、まず試してみる方法かと思います。しかし、読みたい本が漠然としているとき、キーワードでうまくヒットしないとき、とりあえず開架の、思う本が並んでいそうな棚を見にいってみよう、と思われる方は多いことでしょう。

 

 ところが、完全閉架式ですと、そうした行動に移れません。そんなときにも蔵書検索をさらに活用してみてください。図書館の蔵書検索では主題から探すという方法も設けています。下は池田文庫の蔵書検索の詳細検索ページ です。

 

 「分類コード」の欄をクリックするとプルダウンメニューがあらわれます。興味のある主題を選んで、検索ボタンをクリックしますと、池田文庫の蔵書の中で、その主題のもとに分類された本の一覧がでてきます。

 

 

 池田文庫では、蔵書の分類に、日本の図書館でひろく採用されている日本十進分類法をつかっています。

 ただし、特に収集に力を入れ、また閲覧の要望が多いテーマ「小林一三」「宝塚歌劇」「阪急」などには、独自の分類記号を付与し、細分化しています。

 

 下は現在封鎖中の池田文庫の開架より、小林一三関連の本を置いている棚の一部です。

 どの本にも背ラベルが貼ってあります。見えづらいですが、ラベルの上の段には「289-K」とあります。これがその独自の分類記号で、「289-K」は小林一三関連本のグループをあらわしています。

 

下は、その中から2冊。

背ラベルの1段目にはどちらも「289-K」となっていますが、2段目は、左はA、右はBと異なります。AとBの違いは、いったい何でしょうか?

 

答えは、次のとおりです。

...小林一三が書いた本のグループ

...小林一三について書かれた本のグループ

 

 ここで、さきほどの池田文庫の蔵書検索ページ へ戻ります。今度使うのは「請求記号」の欄です。

 

① 小林一三関連本・Aグループに属する本の一覧を出したいときは、

289-K/A」~「289-K/A」と入力してください。

 

② 小林一三関連本・Bのグループに属する本の一覧を出したいときは、

289-K/B」~「289-K/B」と入力してください。

 

③ 小林一三関連本「289-K」全体を出したいときは、

289-K」~「289-K」と入力してください。

または先述の分類コード欄のプルダウンメニューから「289-K」を選択してもOKです。

 

 ただし、ほんの少し小林一三について触れている本などは、「289-K」グループではなく、他の主題グループへ分類されていますので、注意も必要です。

 

 阪急や宝塚歌劇の独自分類についても、いずれご紹介したいと思います。

 

 現在逸翁美術館では、池田文庫収蔵のポスターを中心とした展覧会「阪急沿線メモリーズ 懐かしき1970〜80年代の世界」を開催中ですが、ついでに池田文庫へ調べものに、と考えておられる方、ぜひ今回ご紹介した方法なども活用して、本を探してみてください。

 

 

(司書H)