阪急文化財団ブログ

阪急文化アーカイブズ「絵尽し」の画像を公開

 2023年4月より阪急文化アーカイブズにて「絵尽し(えづくし)」の画像を公開しました。絵尽しとは、江戸時代に劇場などで販売された小冊子で、現代の公演パンフレットのようなものです。上方では「絵尽し」、江戸では「絵本番付」と呼ばれました。この呼び方からもわかるとおり、絵でお芝居の内容が紹介されています。配役のほか、場面の簡単な説明文が入ることもあります。

edks012-092.jpg1. 嘉永6年(1853)の絵尽し表紙

edks012-092p2_1.jpg2.『仮名手本忠臣蔵』の絵尽し(1の中身)

 観劇前に想像したり、観劇後に見返して思い出したり、そういった楽しみ方をしていたのかもしれません。また現代では、絵尽しは「役者絵」の考証にも役立ちます。役者絵で描かれた場面がどのような場面か、より詳しくわかる場合があります。

572-01_02.jpg3.『仮名手本忠臣蔵』五段目の役者絵

edks012-092p2_2.jpg4. 2の絵尽しにも3の役者絵と同じ場面が描かれている(着色部分)

 絵尽しの方には、「斧定九郎 与一兵衛をころし金をとる 翫雀」(青の箇所)「与一兵衛 さいご 友三」(緑の箇所)のように配役と場面の説明が入っています。今回は『仮名手本忠臣蔵』という有名な作品ですので、役者絵だけでも十分伝わるのですが、そうでない作品の場合は、絵尽しが役者絵をより深く理解する手がかりになることもあるのです。

 阪急文化アーカイブズでは、横断検索で「絵尽」と検索するほか、以下を選択してご覧ください。絵尽し748点の画像が閲覧できます(2023年4月現在)。
 検索カテゴリ:浮世絵・番付
 詳細検索の分類:番付/絵尽(絵本番付)

arc_e.jpg5. 阪急文化アーカイブズ検索画面

阪急文化研究年報第11号を発行しました

年報11号

学芸員による調査・研究の成果を発表する『阪急文化研究年報』第11号を刊行しました。

内容は以下のとおりです。

■論文

仙海義之「小林一三 ―「文化のプロバイダー」としての姿」

正木喜勝「箕面有馬電気軌道時代の新聞広告(一九一四~一九一八)
     ―沿線七福神詣と宝塚少女歌劇出張公演を例として―」

■資料紹介

竹田梨紗「連載(十一)逸翁美術館蔵「芦葉会記」(昭和二十六年)」

宮井肖佳「鈴木華邨筆「箱根日記」」

■事業報告


閲覧ご希望の方は池田文庫にお越しいただくか、お近くの公共図書館や大学図書館にお尋ねください。

 

池田文庫の本棚放浪記【第34回】一見さんも、お気軽に

 お隣の逸翁美術館で行われていた『ひゅうどろどろ怪奇まつり~歌舞伎に出てくるオバケだぞ』展が終了しました。展示期間中、池田文庫でも「お化け」をあつかった本の特集コーナーを設け、美術館でもそれを紹介してもらったところ、たくさんの方にお立ち寄りいただくことができました。

 ふだん池田文庫にお越しになる人は、阪急電鉄、宝塚歌劇、歌舞伎、民俗芸能などの中から、「池田文庫でこれを調べたい!」と目的がはっきりしている方が中心。今回のように、美術館帰りの方が、興味を持つ本とは・・・と注目しておりましたが、特集のお化けコーナーの次に人気があったのは、『別冊太陽』シリーズでした。

 『別冊太陽』というと、歴史・生活・文化・芸術などから毎号一つテーマをたくさんの図版と共に紹介する出版物で、ご存知の方も多いでしょう。

 こちらを置いている図書館は珍しくありません。ところが、これを図書として個々のテーマにちなんだ分類のもとに配架するのか、シリーズまたは逐次刊行物として、かためて配架するのか。図書館によって対応が分かれるようです。

 池田文庫では、このように『別冊太陽』シリーズをかためて配架しています。最初これを見たとき、個々のテーマで分類・配架した方が便利なのではないかと思っていました。ところが、「ここはどんな図書館だろう?」と池田文庫へぶらり訪れた方にとっては、このコーナーは手に取りやすい雰囲気が出ているようです。

 例えば書店や馴染みの図書館の新書コーナー。さまざまなテーマがぎゅっとひしめく棚は、自分の興味のあるテーマの本を探すとともに、背表紙を眺めながら新たに関心を向ける対象との出会いも楽しい場所です。

 池田文庫の小さな開架スペースのなかで、様々なテーマが横並びになっている『別冊太陽』の棚は、どうもそういう役どころを引き受けているようにと思っています。

 普通なら手に取って面白そうならとそのまま、購入または貸出という流れになるのでしょうが、池田文庫では貸出を行っていません。館内で読んでもらうことになります。そんなとき『別冊太陽』の美しいカラー図版中心の内容は、気軽にのぞきにきた人にも「ちょっと読んでいくか」という気にさせるのでしょう。

 これをきっかけに、意外にバラエティに富んだ池田文庫の蔵書へと、ぜひ興味を広げていただけるといいなあと、今は思うようになりました。

 長年、池田文庫にぶらりとやってきた来館者をとらえては、ついつい長居させてきた『別冊太陽』。いつのまにか600超のタイトルをもつ大きなコレクションになってきました。あれもこれもと手をのばしたくなる魅力的なタイトルが並んでいますので、たまに蔵出しして、手に取っていただけるようにしたいと考えています。

 


過去には宝塚歌劇の特集も

 

(司書H)

池田文庫の本棚放浪記【第33回】池田文庫の独自分類 ~宝塚歌劇編 最終回・脚本、楽譜、原作漫画など~

 池田文庫の宝塚歌劇関連の「図書」に属する資料群を池田文庫独自の分類をご紹介するシリーズ、今回で最終回です。

 毎回ですが、おさらいから。池田文庫では、宝塚歌劇関連の「図書」に属する資料群を次のように分けています。(詳しくは第28回をご覧下さい。)

775-T/A          年史  (→第29回)

775-T/C          写真集  (→第31回)

775-T/D          脚本をまとめた本

775-T/E          主題歌などをまとめた楽譜本

775-T/F          単行本

775-T/G          原作漫画

 今回は3つめのグループ以降を一気にご紹介です。

 

脚本をまとめた本 (775-T/D)

 古くから、宝塚歌劇は公演ごとに脚本を掲載した冊子を発行してきました。現在も、宝塚大劇場の本公演の脚本を、公演写真集『Le Cinq(ル・サンク)』に載せています。池田文庫ではこれらを「逐次刊行物」として整理しています。

一方で、作家ごと、時代ごとにまとめた作品集などが刊行されることがありました。そうしたものは、「図書」の脚本グループに収めています。

そのなかにはこんな本も。

 こちらは阪急創業者・小林一三の作品集。宝塚少女歌劇のために、みずから作品を書きおろすこともあったんです。作品をまとめた本も、2冊出版されています。

 

■主題歌などをまとめた楽譜本 (775-T/E)

 2000年代後半まで、公演ごとに主題歌集が発行されていました。池田文庫では、それらを「逐次刊行物」として整理しています。ただし、さまざまな公演の曲をまとめた楽譜集が出されることもあります。そうした書籍は、「図書」の楽譜本グループに収めています。

 

単行本 (775-T/F)

 こちらのグループに属するのは、宝塚歌劇の魅力を紹介する本、宝塚歌劇団に在籍した人の自伝や伝記、インタビュー本、宝塚歌劇を研究した人がその成果を発表した本などがあります。

 一口に宝塚歌劇についての本といっても、あつかう時代や切り口は実にさまざま。いろいろな視点の存在に気づかせてくれます。

 

■原作漫画 (775-T/G)

 2.5次元という言葉が、すっかりポピュラーになるまえから、宝塚歌劇では、漫画の舞台化に挑戦してきました。池田文庫では、脚色・舞台化の手法を読み解くための参考資料として、原作漫画も宝塚歌劇関連資料として収集しています。

 『ベルばら』はもちろん、『はいからさんが通る』に『シティーハンター』まで。巻数が多いものもあるので、一部だけ開架で後は書庫、という場合もあります。続きをお読みになりたい場合は、どうぞ受付まで。

 

 以上、池田文庫の宝塚歌劇関連資料の資料分類について4回にわたって紹介してきました。それぞれの分類グループに付与されている記号、例えば脚本グループですと「775-T/D」です。これを池田文庫の蔵書検索の詳細検索 の請求記号欄に「775-T/D」~「775-T/D」と入力して検索いただきますと、このグループに属する図書の一覧を見ることができます。

 

 

 タカラヅカという、演劇分野のなかの一テーマでも、集中的に収集すると膨大な数になっていきます。整理や効率的な探索のために、こうしたグループ分けが生まれました。

 池田文庫のタカラヅカの資料の山から、もとめる情報を見つけだす助けになりましたら幸いです。

 

 

(司書H)

池田文庫の本棚放浪記【第32回】~歌舞伎やタカラヅカ以外の公演プログラムも鋭意整理中!~

池田文庫が所蔵する演劇資料というと、宝塚歌劇や、江戸から明治にかけての歌舞伎に関する上演資料を思い浮かべるのではないでしょうか。実際、池田文庫としても、その二つを特色あるコレクションとして紹介することが多く、資料整理の現場でも、優先して作業を行ってきました。

 

一方で、それ以外の演劇資料もまた、豊富に所蔵しているんです。それは主に関西や東京を中心に、大正から平成にかけて行われた公演のプログラム類なのですが、まだ整理を終えておらず、現在も目録作成作業が進行中です。

 

池田文庫では、劇場名をタイトルとし、個々の公演がその下に集合する体系で、これらを整理しています。現時点で劇場タイトルは300超。1公演の資料だけ収録する劇場タイトルもあれば、数百点もの上演資料を収録する劇場タイトルまで様々です。

 

大正から平成の歌舞伎はもちろん、文楽や日舞、洋舞、オペラにコンサート。劇団民芸や文学座、俳優座などの新劇。新派、新国劇、前進座や、松竹や東宝が製作の現代劇やミュージカルなど。

作業を終えたものから、池田文庫の蔵書検索サービス で検索できるようになっていますので、ぜひご活用いただければと思います。劇場名、演目名、公演年、劇団、演出家などから検索可能です。

 

今回はその中から、春を感じる資料をご紹介。下は祇園甲部歌舞練場の「都をどり」のプログラム群の一部です。池田文庫で所蔵しているのは、大正・昭和年間のものです。

   

「都をどり」は、京都五花街の一つ、祇園甲部の芸妓さん・舞妓さんによる舞踊会。毎年4月祇園甲部歌舞練場で開かれ、春の京都に彩りを加えるイベントの一つです。

1872年(明治5),京都博覧会で披露されたのが評判をよび、翌年からは歌舞練場で行われる恒例の舞踊会となりました。

「都をどり」では、毎年ことなる歌題のもとで、舞台がつくられます。代々のプログラムを通じて、その伝統と挑戦の歴史に触れることができます。

 

戦中・戦後に休演した6年をのぞいて、100年以上ものあいだ連綿と続いてきた「都をどり」ですが、昨年・一昨年は、新型コロナウイルスの影響で中止となってしまいました。

今年は3年ぶりの開催。待ちわびていた方にとっても、芸妓さん・舞妓さんにとっても、万感の思いのこもった公演ではないかと思います。

祇園甲部歌舞練場は現在耐震工事中ですので、今年はかわりに、南座で行われています。

  [司書H]