演劇の舞台で、俳優の演技を一段と深める化粧。中でも京劇などの中国伝統演劇や、日本の歌舞伎は、特に化粧が大きな役割を持ちます。
中国の臉譜(れんぷ)は、歌舞伎の隈取にあたるもので、ともに性根や感情などの抽象的な役柄を、デフォルメして表現します。そこには独自の意味や約束ごとがあり、臉譜はその基本を守りながらも、時代とともに変化し、洗練されてきました。また、歌舞伎の隈取は、俳優の個性を加えながらも、伝統を継承しています。
時代はくだり、宝塚歌劇のスターたちも、伝統を学び、オリジナルのタカラヅカメイクを編み出しました。映像の世界では、よりリアルな特殊メイクが研究される今日ですが、同時に伝統的な化粧も多方面に影響を与えているのです。
本展では、肉筆臉譜や錦絵の隈取を中心に、伝統が生み出したさまざまな舞台の顔を紹介します。展示品の中には、現代のヒーローやキャラクターを思わせるものが見つかるかもしれません。

歌舞伎
錦絵 文久元年(1861) 初世河原崎権十郎楽屋図