逸翁美術館が所蔵する重要文化財16件のうちのひとつ「芦引絵」(あしびきえ)は、室町時代に流行した稚児物語を絵画化した作品です。物語は、比叡山延暦寺の僧が、東大寺の聡明な少年を見初めるところより始まり、その後の二人の別離と邂逅とを描きます。
室町時代末期に比叡山で五巻の「芦引絵」が作られ、それを模写させたという記録がありますが、いずれも現存しません。この絵巻はそれらを写して現在に伝える、唯一の貴重な作品となります。
この度、令和2(2020)年度から令和6(2024)年度にかけ、文化庁の重要文化財(建造物・美術工芸品)修理、防災、公開活用事業費国庫補助を活用し、池田市からも補助を受けて実施した、重要文化財修理事業が完遂いたしました。事業の成果を皆様にご覧いただきたく、全巻を一堂に展示する特別公開の機会を設けますので、足をお運びいただければ幸いです。


