女方(おんながた)とは、男性ばかりで演じる歌舞伎の中の女性の役、またそれを演じる俳優のことで、その中にはさまざまな役柄があります。
まず若い女性を代表するのはお姫様。赤い衣裳を着ることから「赤姫」と呼ばれます。赤は恋する姫の積極的で一途な情熱を表しているのです。
そしてもう少しオトナな女性といえば夫のために身を挺して尽くす妻。中でも毅然とした武士の女房や武家に仕える女性は、髪型から「片はずし」と呼ばれます。
さらに江戸時代後期に登場した「悪婆(あくば)」は、惚れた男のためなら悪事も犯す伝法肌の姉御。でも手の付けられないワルではなく、憎らしいけどその一途さがいじらしい女性です。
本展では、このような女方を描いた浮世絵から、衣裳が表わす意味や、役の性根を読み解きます。浮世絵に描かれるのも、現代の舞台で演じるのも全て男性だということを忘れてしまいそうな究極の「女方芸」に触れてください。