

ヴェネチア縦縞ガラスレース鉢
鉢は、元来は僧侶が所持する食器を指す言葉で、金属製や陶磁器で作られたものが原則でしたが、やがて広く料理の中に取り入れられるようになると、その大半が陶磁器で作られるようになります。料理に用いられた鉢は、丼鉢や菓子鉢などの用途に応じた名称や、平鉢や角鉢、鉦(銅鑼)鉢といった形状によって分類された呼び名がつけられ、様々な種類の鉢が作られていきました。また、茶の湯においては、懐石の器として用いられる他に、大振りの深鉢に塗蓋を誂えて水指に転用した例も多く見られ、数寄者の好みを見ることが出来ます。
かつて小林一三(逸翁)は、鉢を一〇〇点集めようと思い立ったと言います。昭和38年、逸翁のその想いを懐旧して百点の鉢を出品し、展覧会を美術館で開催した際のことを、「「それ百八(鉢)煩悩というじゃないか・・・」とは先生(逸翁)一流の洒落でしたが、その収集は和・中・洋にわたってたちまち百を越え、美術館へ頂いたときには三倍近くになっていました」と当時の職員が回想しています。今回の展示では、この展覧会を再現しつつ、「百八(鉢)」にかけた108点の鉢を出品いたします。個性豊かな「百八(鉢)」の世界をご覧下さい。