茶碗の魅力とはどの様なところにあるでしょうか。茶碗の姿・形、釉薬による色や現れた景色、華やかな絵付、見込や高台の様子、手触りなど、どこに魅力を感じるかは人それぞれ異なりますが、そうした全てが茶碗の魅力を形作る要素と言えるでしょう。
古来より陶磁器は様々な土地で焼かれ、それは日本国内のみならず、世界各地に及びます。やがてその中から茶碗を焼く窯が現れ、茶の湯の隆盛ととも に盛んに作られるようになりました。名も無い職人や陶工によって焼かれたもの、時には著名な作家や陶工の手で作られた茶碗は、多くの茶人たちに愛好され、 現在に伝えられています。特に「一樂二萩三唐津」や「一井戸二樂三唐津」と呼ばれて、茶人に愛される優れた茶陶を焼く窯を呼び表わす言葉もあり、茶の湯の 世界において、茶碗は欠かすことの出来ない道具の一つであることが窺えます。亭主と客の間を行き来する茶碗は、亭主の「もてなしの心」を伝えるものであ り、客はその心とともに、直接手にとって触れることで、茶碗の持つ息づかいを感じることが出来ます。これもまた、茶碗に魅せられる要因の一つではないで しょうか。
このたびの展示では館蔵品の中から10のテーマに沿った茶碗を選び、その楽しみ方を10の法則で紹介します。逸翁が大切に所蔵し、数々の茶会を彩った茶碗に加え、近・現代の作家によるものなど、様々です。あなたのお気に入りの一碗を見つけてください。