小林一三は幅広い美術品に関心を抱き、漆工や蒔絵の工芸品も数多く収集しました。なかには、「花鳥蒔絵螺鈿洋櫃」(重文)などの珍しい品も見られます。
また、海外に赴いた際にはその土地の品を買い求め、「草花文緑ガラス小壼」をはじめとする西洋の器物もコレクションに加えました。
ヨーロッパ諸国のデミタスカップやティーカップを多数揃えているのも、世界を飛び回っていた一三らしい趣味だといえるでしょう。
16世紀末から17世紀初期に、ポルトガル人の好みに合わせて日本で制作され、ヨーロッパ向けに輸出された南蛮漆器の一種、かまぼこ型の箱を洋櫃と呼ぶ。 本品は、高台寺蒔絵などに近く、前面には桔梗・菊・萩・葛などの秋草を配す。 中央には飛鳥をおき、周縁部に南蛮唐草を巡らす。蓋裏には朝顔のからむ萩一枝をすっきりと描く。

清時代初期の、康煕年間(1662~1722)頃に作られたと考えられるため、康煕五彩ともいわれる。 この時代は明から清への王朝交代に伴う混乱期で、まだ官窯は整備されていなかった。器底には「成化」銘が染付で記されているが、これは後入れのものである。 鮮やかな色絵で器面いっぱいに蝶と草花文を描き詰めていて、優美な仕上がりになっている。

昭和15年(1940)、一三が訪伊経済使節としてイタリアを訪れた際に購入したもの。 ガラス産地で有名なベネチア製で、透明な緑色の地に金のエナメルを焼き付けている。その上にも金で唐草文を盛り上げ、ライラックの花や枝葉を貼付する。 一つ一つ小花を組み合わせて貼り付けるなど、立体的に表現している。一三はこれに牙蓋を誂えて茶器に用いた。

マイセンの壺として、一三がドイツのベルリンで購入したもの。 しかし窯印から、マイセン窯ではなく、ドレスデンに近いポットシャペルの磁器工場で制作されたものと見られる。 ロココ的な主題を用いた様々な装飾が施され、華やかな貼付文様と多彩な絵付けとが、生き生きと器体を飾り立てている。 一部に欠損が見られるが、ほぼ完形を保つ。
