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阪急文化研究年報第11号を発行しました

年報11号

学芸員による調査・研究の成果を発表する『阪急文化研究年報』第11号を刊行しました。

内容は以下のとおりです。

■論文

仙海義之「小林一三 ―「文化のプロバイダー」としての姿」

正木喜勝「箕面有馬電気軌道時代の新聞広告(一九一四~一九一八)
     ―沿線七福神詣と宝塚少女歌劇出張公演を例として―」

■資料紹介

竹田梨紗「連載(十一)逸翁美術館蔵「芦葉会記」(昭和二十六年)」

宮井肖佳「鈴木華邨筆「箱根日記」」

■事業報告


閲覧ご希望の方は池田文庫にお越しいただくか、お近くの公共図書館や大学図書館にお尋ねください。

 

池田文庫の本棚放浪記【第34回】一見さんも、お気軽に

 お隣の逸翁美術館で行われていた『ひゅうどろどろ怪奇まつり~歌舞伎に出てくるオバケだぞ』展が終了しました。展示期間中、池田文庫でも「お化け」をあつかった本の特集コーナーを設け、美術館でもそれを紹介してもらったところ、たくさんの方にお立ち寄りいただくことができました。

 ふだん池田文庫にお越しになる人は、阪急電鉄、宝塚歌劇、歌舞伎、民俗芸能などの中から、「池田文庫でこれを調べたい!」と目的がはっきりしている方が中心。今回のように、美術館帰りの方が、興味を持つ本とは・・・と注目しておりましたが、特集のお化けコーナーの次に人気があったのは、『別冊太陽』シリーズでした。

 『別冊太陽』というと、歴史・生活・文化・芸術などから毎号一つテーマをたくさんの図版と共に紹介する出版物で、ご存知の方も多いでしょう。

 こちらを置いている図書館は珍しくありません。ところが、これを図書として個々のテーマにちなんだ分類のもとに配架するのか、シリーズまたは逐次刊行物として、かためて配架するのか。図書館によって対応が分かれるようです。

 池田文庫では、このように『別冊太陽』シリーズをかためて配架しています。最初これを見たとき、個々のテーマで分類・配架した方が便利なのではないかと思っていました。ところが、「ここはどんな図書館だろう?」と池田文庫へぶらり訪れた方にとっては、このコーナーは手に取りやすい雰囲気が出ているようです。

 例えば書店や馴染みの図書館の新書コーナー。さまざまなテーマがぎゅっとひしめく棚は、自分の興味のあるテーマの本を探すとともに、背表紙を眺めながら新たに関心を向ける対象との出会いも楽しい場所です。

 池田文庫の小さな開架スペースのなかで、様々なテーマが横並びになっている『別冊太陽』の棚は、どうもそういう役どころを引き受けているようにと思っています。

 普通なら手に取って面白そうならとそのまま、購入または貸出という流れになるのでしょうが、池田文庫では貸出を行っていません。館内で読んでもらうことになります。そんなとき『別冊太陽』の美しいカラー図版中心の内容は、気軽にのぞきにきた人にも「ちょっと読んでいくか」という気にさせるのでしょう。

 これをきっかけに、意外にバラエティに富んだ池田文庫の蔵書へと、ぜひ興味を広げていただけるといいなあと、今は思うようになりました。

 長年、池田文庫にぶらりとやってきた来館者をとらえては、ついつい長居させてきた『別冊太陽』。いつのまにか600超のタイトルをもつ大きなコレクションになってきました。あれもこれもと手をのばしたくなる魅力的なタイトルが並んでいますので、たまに蔵出しして、手に取っていただけるようにしたいと考えています。

 

過去には宝塚歌劇の特集も

 

(司書H)

池田文庫の本棚放浪記【第33回】池田文庫の独自分類 ~宝塚歌劇編 最終回・脚本、楽譜、原作漫画など~

 池田文庫の宝塚歌劇関連の「図書」に属する資料群を池田文庫独自の分類をご紹介するシリーズ、今回で最終回です。

 毎回ですが、おさらいから。池田文庫では、宝塚歌劇関連の「図書」に属する資料群を次のように分けています。(詳しくは第28回をご覧下さい。)

775-T/A          年史  (→第29回)

775-T/C          写真集  (→第31回)

775-T/D          脚本をまとめた本

775-T/E          主題歌などをまとめた楽譜本

775-T/F          単行本

775-T/G          原作漫画

 今回は3つめのグループ以降を一気にご紹介です。

 

脚本をまとめた本 (775-T/D)

 古くから、宝塚歌劇は公演ごとに脚本を掲載した冊子を発行してきました。現在も、宝塚大劇場の本公演の脚本を、公演写真集『Le Cinq(ル・サンク)』に載せています。池田文庫ではこれらを「逐次刊行物」として整理しています。

一方で、作家ごと、時代ごとにまとめた作品集などが刊行されることがありました。そうしたものは、「図書」の脚本グループに収めています。

そのなかにはこんな本も。

 こちらは阪急創業者・小林一三の作品集。宝塚少女歌劇のために、みずから作品を書きおろすこともあったんです。作品をまとめた本も、2冊出版されています。

 

■主題歌などをまとめた楽譜本 (775-T/E)

 2000年代後半まで、公演ごとに主題歌集が発行されていました。池田文庫では、それらを「逐次刊行物」として整理しています。ただし、さまざまな公演の曲をまとめた楽譜集が出されることもあります。そうした書籍は、「図書」の楽譜本グループに収めています。

 

単行本 (775-T/F)

 こちらのグループに属するのは、宝塚歌劇の魅力を紹介する本、宝塚歌劇団に在籍した人の自伝や伝記、インタビュー本、宝塚歌劇を研究した人がその成果を発表した本などがあります。

 一口に宝塚歌劇についての本といっても、あつかう時代や切り口は実にさまざま。いろいろな視点の存在に気づかせてくれます。

 

■原作漫画 (775-T/G)

 2.5次元という言葉が、すっかりポピュラーになるまえから、宝塚歌劇では、漫画の舞台化に挑戦してきました。池田文庫では、脚色・舞台化の手法を読み解くための参考資料として、原作漫画も宝塚歌劇関連資料として収集しています。

 『ベルばら』はもちろん、『はいからさんが通る』に『シティーハンター』まで。巻数が多いものもあるので、一部だけ開架で後は書庫、という場合もあります。続きをお読みになりたい場合は、どうぞ受付まで。

 

 以上、池田文庫の宝塚歌劇関連資料の資料分類について4回にわたって紹介してきました。それぞれの分類グループに付与されている記号、例えば脚本グループですと「775-T/D」です。これを池田文庫の蔵書検索の詳細検索の請求記号欄に「775-T/D」~「775-T/D」と入力して検索いただきますと、このグループに属する図書の一覧を見ることができます。

 

 

 タカラヅカという、演劇分野のなかの一テーマでも、集中的に収集すると膨大な数になっていきます。整理や効率的な探索のために、こうしたグループ分けが生まれました。

 池田文庫のタカラヅカの資料の山から、もとめる情報を見つけだす助けになりましたら幸いです。

 

 

(司書H)

池田文庫の本棚放浪記【第32回】~歌舞伎やタカラヅカ以外の公演プログラムも鋭意整理中!~

 池田文庫が所蔵する演劇資料というと、宝塚歌劇や、江戸から明治にかけての歌舞伎に関する上演資料を思い浮かべるのではないでしょうか。実際、池田文庫としても、その二つを特色あるコレクションとして紹介することが多く、資料整理の現場でも、優先して作業を行ってきました。

 

 一方で、それ以外の演劇資料もまた、豊富に所蔵しているんです。それは主に関西や東京を中心に、大正から平成にかけて行われた公演のプログラム類なのですが、まだ整理を終えておらず、現在も目録作成作業が進行中です。

 

 池田文庫では、劇場名をタイトルとし、個々の公演がその下に集合する体系で、これらを整理しています。現時点で劇場タイトルは300超。1公演の資料だけ収録する劇場タイトルもあれば、数百点もの上演資料を収録する劇場タイトルまで様々です。

 

 大正から平成の歌舞伎はもちろん、文楽や日舞、洋舞、オペラにコンサート。劇団民芸や文学座、俳優座などの新劇。新派、新国劇、前進座や、松竹や東宝が製作の現代劇やミュージカルなど。

 作業を終えたものから、池田文庫の蔵書検索サービスで検索できるようになっていますので、ぜひご活用いただければと思います。劇場名、演目名、公演年、劇団、演出家などから検索可能です。

 

 今回はその中から、春を感じる資料をご紹介。下は祇園甲部歌舞練場の「都をどり」のプログラム群の一部です。池田文庫で所蔵しているのは、大正・昭和年間のものです。

 

 

 「都をどり」は、京都五花街の一つ、祇園甲部の芸妓さん・舞妓さんによる舞踊会。毎年4月祇園甲部歌舞練場で開かれ、春の京都に彩りを加えるイベントの一つです。

 1872年(明治5),京都博覧会で披露されたのが評判をよび、翌年からは歌舞練場で行われる恒例の舞踊会となりました。

 「都をどり」では、毎年ことなる歌題のもとで、舞台がつくられます。代々のプログラムを通じて、その伝統と挑戦の歴史に触れることができます。

 

 戦中・戦後に休演した6年をのぞいて、100年以上ものあいだ連綿と続いてきた「都をどり」ですが、昨年・一昨年は、新型コロナウイルスの影響で中止となってしまいました。

 今年は3年ぶりの開催。待ちわびていた方にとっても、芸妓さん・舞妓さんにとっても、万感の思いのこもった公演ではないかと思います。

 祇園甲部歌舞練場は現在耐震工事中ですので、今年はかわりに、南座で行われています。

 

[司書H]

阪急文化アーカイブズ「役割番付」の画像を公開

池田文庫が所蔵する芝居番付のうち「役割番付」の画像約4,800点を公開しました。
阪急文化アーカイブズ( https://www.hankyu-bunka.or.jp/archive/ )の検索カテゴリ「浮世絵・番付」の詳細検索項目「分類」で「番付/役割」を選択していただければ、該当画像がすべて表示されます。

役割番付は現代で言うならば演劇のチラシで、配役などを知らせるものです。池田文庫では「役者絵」(江戸~明治期)の考証を目的として収集されてきました。

役者絵は当時の人気俳優を描いたものですが、やはり現代的に言うならば公演ごとに発行されるブロマイドです。そこに上演年月や劇場といった詳しい公演情報はほとんど記載されていません。これらを教えてくれるのが役割番付なのです。

しかしそのためにはまず、番付をできる限り網羅的に揃えなくてはなりません。全体数が少なければ、目当ての番付(=公演情報)が見つかる可能性も低くなります。ですので、かつて池田文庫の職員は古書店を回っては番付を買い集めたそうです。その結果、特に上方の役者絵の考証に重点をおいていたこともあり、大坂の番付を豊富に揃えることができました。

役者絵と役割番付の例を見てみましょう。

これが役者絵です。2枚1組の絵の上部に「梅川 中山よしを」「忠兵衛 中村歌右衛門」とあるのは役名と役者名です。下部の「春好画」と「春蝶画」は絵師のサイン、つまり合作です。

梅川・忠兵衛といえば『恋飛脚大和往来』の主人公ですね。宝塚歌劇でも上演されています。
春好は大坂の浮世絵師 春好斎北洲、春蝶はその門人です。北洲の作画時期は文化・文政・天保期(19世紀前半頃)です。
この時期の中村歌右衛門といえば、上方で絶大な人気を誇り、江戸に下っても人気を博した三代目ということになります(実は役者絵は人気役者の似顔絵でもあるので、この顔を見ただけでも三代目とわかります)。一方の「中山よしを」は初代のことです。

この二人が共演する『恋飛脚大和往来』の役割番付がこちらです。

上下2段の枠の中には、役名と役者名、左にはスタッフも記されています。
そして欄外右端に、年月日と劇場が書き込まれていますので、この芝居が「子の正月九日より」「道頓堀角の芝居」で上演されたものとわかります。この「子」は文化13年(1816年)にあたります。

今ではデータベースで検索できるのが当たり前になっていますが、それが可能なのもこうした考証ひとつひとつの積み重ねなんですね。ちなみに池田文庫で考証の土台を築いたのはたまたま配属された阪急電鉄の社員でした。歌舞伎を見たこともなかったとか。その後専門家による調査が行われましたが、その土台は素晴らしいものだったそうです。これに関するエピソードは、土田衞「半世紀前の池田文庫」(『館報池田文庫』21号、2002年10月)などでも紹介されています。

池田文庫の本棚放浪記【第31回】~池田文庫の独自分類 ~宝塚歌劇編 その3・写真集グループ~

 今回は、池田文庫の宝塚歌劇関連の「図書」に属する資料群を池田文庫独自の分類をご紹介するシリーズの続きです。

 まずはおさらいから。池田文庫では、宝塚歌劇関連の「図書」に属する資料群を次のように分けています。(詳しくは第28回をご覧下さい。)

 

775-T/A          年史  (→第29回)

775-T/C          写真集

775-T/D          脚本をまとめた本

775-T/E          主題歌などをまとめた楽譜本

775-T/F          単行本

775-T/G          原作漫画

 

今回ご紹介したいのは2つめの「写真集」グループです。

 

池田文庫 生徒個人写真集グループの棚より

 

 

■写真集グループ(775-T/C)

 

 池田文庫にて、宝塚歌劇の写真集と分類されている本にはどんなのものがあるのでしょうか。このシリーズでたびたびご紹介してきた方法を、今回も使ってみましょう。

 詳細検索の請求記号欄に「775-T/C」~「775-T/C」と入力し、検索ボタンをクリックしますと、ズラリと出てきます。

 

 検索結果を見ていきますと、だいたい内容を想像できるようなタイトルもあれば、そうでないものも。一口に宝塚歌劇の写真集といっても、特集する対象はさまざまです。

 そこで、写真集の内容によって、おおまかに次の5つグループに細分しています。

 

775-T/Ca 生徒個人…          特定の生徒を特集した写真集。

775-T/Cb 演目・公演 …     「ベルサイユのばら」や「エリザベート」など、たびたび再演されてきた人気の演目を特集したものや、某年某月の特定の公演写真集など。(ただし、宝塚大劇場本公演の舞台写真集『Le Cinq』は「逐次刊行物」グループに属していますので、この範囲外です。)

775-T/Cb-K 海外公演 … 公演写真集のなかでも、海外公演については別個にグループをつくっています。

775-T/Cc 全体 … 特定の組や生徒を特集するのではなく、全体的な内容をもったもの。

775-T/Cd 組 …     花・月・雪・星・宙のなかで、特定の組を特集した写真集。

 

 グループに属する本の一覧を出すには、そのグループに付与されている記号を詳細検索の請求記号欄へ入力します。

 

 例えば、生徒の個人写真集のグループで試してみましょう。請求記号欄へ「775-T/Ca」~「775-T/Ca」と入力して検索ボタンをクリックすると、一覧を出すことができます。出版年順や書名順で並び替えることもできますし、調べたい年代で絞り込むこともできます。

 

 

 では、池田文庫で確認されているタカラジェンヌの個人写真集の中で、もっとも古い出版年をもつのは、いったい誰のものなのでしょうか。さきほどの検索結果を、古い順に並べかえて先頭にでてくるのが、その本ということになります。

 現在のところ、それは『小夜福子ポートレート』となっています。昭和10年(1935年)9月に刊行されました。90年ちかく前の写真集ということになりますね。

 

 小夜福子さんというと、戦前のレビュー黄金期に大人気を博したスター。小夜さんの写真が詩とともにレイアウトされ、抒情的な雰囲気ただよう写真集です。

 

 池田文庫は書庫に入っている本がたくさんあります。キーワード検索で、読みたい本がうまくヒットしなかったときは、ぜひこんな方法もつかって、思いがけない本との出会いも楽しんでいただきたいと思います。

 

 

(司書H)

『阪急文化研究年報』第10号刊行しました

学芸員による調査・研究の成果を発表する『阪急文化研究年報』第10号を刊行しました。


内容は以下のとおりです。

仙海義之 「博物館経営に係る経営資源とサービスとの連関」
宮井肖佳 「日本画家・鈴木華邨について -新発見資料「鈴木華邨旧蔵資料」(石川県立歴史博物館蔵)調査を踏まえて-」
正木喜勝 「箕面有馬電気軌道の月刊広告絵葉書と新聞広告 -『山容水態』以前の箕面公会堂・宝塚新温泉を中心に-」
竹田梨紗 「連載(十) 逸翁美術館蔵「芦葉会記」(昭和二十五年)」

閲覧ご希望の方は池田文庫にお越しいただくか、お近くの公共図書館や大学図書館にお尋ねください。

池田文庫の本棚放浪記【第30回】~修復報告・宝塚歌劇ポスター~

 池田文庫の資料の独自分類を紹介するシリーズを一旦中断しまして、今回は修復作業から戻ってきた、一枚の宝塚歌劇公演のポスターについて、ご紹介させていただきたいと思います。

 

 

 このポスターの元の持ち主は内海重典氏。ポスター中に、『ファイン・ロマンス』の作・演出者として名前がみえます。

 内海重典氏(1915-1999)は、『南の哀愁』『ラ・グラナダ』などの作品で知られる、昭和の宝塚歌劇の代表的な演出家の一人。宝塚の外でも、万博やポートピア’81といった大イベントの開会式を手がけたことでも知られた人物です。

 

 ポスターは、長く折りたたまれた状態だったため、折り目部分が特に弱り、触れるのも開くのも恐くてできない状態でした。写真からも、その名残がお分かりになるかと思います。

 修復作業では、和紙による裏打ちと、劣化をくいとめる脱酸処理がほどこされ、みちがえた姿で戻ってきました。

 

 大きさは縦120cmあまり。池田文庫が所蔵するポスターの中でも、かなり大きな部類です。

 その半分ちかくを、タカラジェンヌの晴れやかな笑顔で占めています。明快で迫力ある構図。高く掲げれば、遠くにいる人の視線もひきつけたでしょう。

 デザイナーは、当時東宝で活躍していた土方重巳氏。のちにはNHKで放送され人気を得た人形劇「ブーフーウー」の人形デザインを手がけた人物です。

 

 このポスターで宣伝されている公演は、ある特別な意味をもっていました。

 年の記載はないですが昭和22 (1947)年4月公演、終戦から2年近くになるころです。会場は東京・有楽町にあった、日劇(にちげき)の愛称で親しまれた日本劇場。お詳しい方ですと、これでピンとくるかもしれません。

 実はこちら、終戦後はじめて東京で行われた宝塚歌劇公演のポスターなんです。東京公演は、昭和19年1月以来でしたので、およそ3年ぶりのお目見得。ホームグラウンドの東京宝塚劇場はGHQに接収されていたため、再開公演は日本劇場で行われることになりました。

 宝塚大劇場では1年前からすでに公演が再開していました。その様子を耳にして、宝塚歌劇団の上京を今か今かと待ちわびる人々にとって、このポスターは「東京でもいよいよ!」という、うれしい知らせを届けるものだったんです。

 

 時代背景や、当時の人々の気持ちを想像しながら、このポスターを見ると、ちょっと違って見えてきませんか?

 

 こちらのポスターも撮影を行い、いずれ、阪急文化アーカイブズで公開の予定です。

 

 

 

(司書H)

池田文庫の本棚放浪記【第29回】池田文庫の独自分類 ~宝塚歌劇編 その2・年史グループ~

 はじめる前に、ちょっとだけ前回(第28回)のおさらいです。池田文庫では、宝塚歌劇関連の「図書」に属する資料群を次のように分けています。

 

775-T/A          年史

775-T/C          写真集

775-T/D          脚本をまとめた本

775-T/E           主題歌などをまとめた楽譜本

775-T/F           単行本

775-T/G          原作漫画

 

この大枠の話で、前は終わってしまいました。今回から、いよいよ個々の資料群のご紹介へ入っていきたいと思います。

 

■年史グループ(775-A/A)

 宝塚歌劇団創立○十周年の節目の年に、それまでの歴史をまとめた本が出るのが、恒例となっているのはご存知でしょうか?

 これまでタカラヅカの歴史に言及した本はたくさん出版されてきました。しかしこれは、宝塚歌劇団による宝塚歌劇団の歴史の本。タカラヅカの調べものの定番アイテムの一つです。池田文庫では、あまりに頻繁に参照されるので、グループとして固めて配架しています。

 

 直近のものは、100周年だった2014年に発行された「宝塚歌劇100年史 虹の橋渡りつづけて」。ご覧になったことのある方は多いかもしれません。

 

 

 100年史は、「舞台編」と「人物編」の2冊構成です。

 「舞台編」は、宝塚大劇場、東京公演、バウホール、地方・海外公演等々の舞台記録集、賞歴、年表などを掲載しています。

 「人物編」は、1期生から99期生の生徒紹介に加え、スタッフ紹介、宝塚大劇場公演のポスター一覧、出版物紹介などが載っています。

 情報が見やすく整理され、抜群に使い勝手の良いデータブックです。池田文庫にあっては、タカラヅカの雑誌、公演プログラムなど、「当時の資料」にあたるための索引としても、とても役に立っています。

 

 100余年の歴史の中で出た年史は、もちろんこれだけではありません。

 20周年と40周年、以降は10年ごとに発行されてきました。新しい年史には、最新10年分の情報が加わります。だからといって、古い年史が用済みになるというわけでは、決してありません。「それを調べるには、○年史が便利」「○年史にしか載っていない」ということが、たくさんあるんです。

 

 

 たとえば草創期について調べたいならば、20年を1冊かけて語る20年史が、濃い情報をもっています。

 機関誌「歌劇」が休刊していた戦中期については、40年史や50年史の年表は、貴重な情報源です。

 写真から歴史をたどりたい方には、大きな図版がたくさん載った80年史が読みやすいかもしれません。

 

 ひとくちに年史といっても、それぞれに特色をもっています。

 知りたいことを詳しく載せているのはどれか。調べたいことに便利な形式をとっているのはどれか。古いものから新しいものまで、ぜひ一度手にとってみて、ご自身の調べものに合うものを見つけていただければと思います。

 

(司書H)

池田文庫の本棚放浪記【第28回】池田文庫の独自分類 ~宝塚歌劇編~

 池田文庫の所蔵する資料を調べるのに役立つ蔵書検索

 前回から、キーワードではなく、主題から本を探す方法を紹介しています。ちょっと専門的なお話になりますが、より深く池田文庫の資料を探索したいと思っておられる方の、ご参考になりましたら幸いです。

 

 池田文庫で特に収集に力を入れている「小林一三」「宝塚歌劇」「阪急」に関する本は、池田文庫ならではの独自分類をもとに細分化しているのは、前回ご紹介したとおり。

 今回からは、その中でも「宝塚歌劇」に関する本を、池田文庫ではどう分類しているのかをご紹介したいと思います。

 

 まず、宝塚歌劇関連資料を、大きく次の二つに分けています。

 

① 逐次刊行物

雑誌

公演ごとの発行物(プログラム、脚本集、主題歌集など)

 

② 図書

それ以外の資料

 

 「逐次刊行物」に属する資料がどんなものかは、イメージしやすいのではないでしょうか。

 こちらは、調べたい人物や事柄、演目、劇場、時代などからの検索が調べやすいと思います。池田文庫で作成している雑誌記事索引では、宝塚歌劇団の機関誌「歌劇」「宝塚グラフ」の、どの号にどんな記事が載っているのかも調べることもできます。

 

 問題は②の「図書」に属する資料です。こちらは具体的にどんなものがあるのか、わかりにくいと思います。キーワードがうまくヒットしなければ、本のタイトルの一覧をみて読む本を決めたい。そう思われるかもしれません。そんなときに試していただきたい方法をご紹介します。

 

 

 上は宝塚歌劇関連資料の棚より。これらの本の背ラベルの一段目はすべて「775-T」となっています。

池田文庫では宝塚歌劇関連と分類した資料には、「775-T」という分類記号を付与しているんです。

 

 さて、ここで池田文庫の詳細検索ページへ。分類コード欄のプルダウンメニューから「775-T」~「775-T」を選んで、検索ボタンをクリックすると、池田文庫で宝塚歌劇関連と分類した資料がズラリとでてきます。

 

 「図書」は1600件超と出ます。こちらは今後も増えていきます。数が多くて順に見ていくのは大変です。そこで、もう一段こまかい分類をお伝えします。

宝塚歌劇関連の図書を次のグループにわけています。

 

775-T/A          年史

775-T/C          写真集

775-T/D          脚本をまとめた本

775-T/E           主題歌などをまとめた楽譜本

775-T/F           単行本

775-T/G          原作漫画

 

例えば、年史グループの本の一覧を出したいとき。詳細検索ページの、今度は請求記号の欄に、775-T/A ~775-T/Aと入力してみて下さい。年史グループに属する本の一覧がでてきます。写真集以下の資料群も同様にそれぞれの記号を入力、検索すると、一覧がでてきます。

 ここで、それぞれの資料グループの紹介に入っていきたいところなのですが、今回はこのあたりで。次回につづきます。

 

 

(司書H)