阪急文化財団ブログ

芝居小屋「呉服座」

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月曜日の休みを利用して愛知県犬山市にある明治村に行ってきました。明治村の中には近代に建てられた貴重な建築物が移転され保存公開されています。

この中に、池田に元々あった芝居小屋「呉服座」も移築されています。呉服座は江戸時代以来の伝統建築の名残を留めていて、元々は明治の初め頃、池田の戎神社の近くに建てられていたそうです。この時は「戎座」と呼ばれていていましたが、明治25年(1892)に西本町猪名川の川岸に移り、その時に「呉服座」と名を改めたと言われています。

写真は現在の呉服座の跡地です。この辺りに建っていました。国道176号線の呉服橋を池田側に渡ってすぐの川沿いの道を南に20メートル程度下がった辺りにあります。今はこんな風に碑が建てられているのみです。奥の方に阪急電車の高架が見えるのがわかりますでしょうか。

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ここでは地方巡業の歌舞伎や、壮士芝居、新派、落語、講談、漫才等様々なものが演じられていたようです。

明治村のHPにある呉服座の説明には、次の様に書かれています。
構造は木造二階建杉皮葺で、舞台、客席部分には大きな切妻屋根を架け、その前に軒の高い下屋を降ろして、小屋の入口にしている。正面の高い切妻には太鼓櫓を突き出し、入口下屋の軒下には絵看板を掲げている。正面の壁は黒漆喰塗で、腰には和風の下見板が建て込まれている。出入口の扉は、裏面は和風の舞良戸であるが、表面には洋風の枠飾り等を施しており、目新しさを感じさせる。 奈落は舞台の袖から降りて、廻り舞台の下を通り抜け、花道づたいに入口近くの楽屋の下まで達している。廻り舞台は、円周に沿って取り付けられた車と中心軸とで支えられている。 客席は、平場(平土間)と呼ばれ、桝席に区切られている中央の低い部分と、棧敷と呼ばれる廻りの部分からなる。 このような芝居小屋では、楽屋は舞台の裏手等に設けられるのが普通であるが、この呉服座では入口土間の上にあり、役者は奈落を通って舞台袖に行くようになっている。
DSC_0377 DSC_0378 呉服座は重要文化財指定を受けている建物です。当時の面影を伝える貴重な建築物は、維持管理が非常に大変なのですが、明治村さんで大切に保存公開されています。 移転は昭和46年(1971)、重要文化財指定を受けたのはそれからもう少し後の昭和59年(1984)のことです。池田の街から離れてしまいましたが、かつて池田にあった建物として今後も生き続けてほしいなぁと思いました。 (学芸員A)