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池田文庫の本棚放浪記【第30回】~修復報告・宝塚歌劇ポスター~

 池田文庫の資料の独自分類を紹介するシリーズを一旦中断しまして、今回は修復作業から戻ってきた、一枚の宝塚歌劇公演のポスターについて、ご紹介させていただきたいと思います。

 

 

 このポスターの元の持ち主は内海重典氏。ポスター中に、『ファイン・ロマンス』の作・演出者として名前がみえます。

 内海重典氏(1915-1999)は、『南の哀愁』『ラ・グラナダ』などの作品で知られる、昭和の宝塚歌劇の代表的な演出家の一人。宝塚の外でも、万博やポートピア’81といった大イベントの開会式を手がけたことでも知られた人物です。

 

 ポスターは、長く折りたたまれた状態だったため、折り目部分が特に弱り、触れるのも開くのも恐くてできない状態でした。写真からも、その名残がお分かりになるかと思います。

 修復作業では、和紙による裏打ちと、劣化をくいとめる脱酸処理がほどこされ、みちがえた姿で戻ってきました。

 

 大きさは縦120cmあまり。池田文庫が所蔵するポスターの中でも、かなり大きな部類です。

 その半分ちかくを、タカラジェンヌの晴れやかな笑顔で占めています。明快で迫力ある構図。高く掲げれば、遠くにいる人の視線もひきつけたでしょう。

 デザイナーは、当時東宝で活躍していた土方重巳氏。のちにはNHKで放送され人気を得た人形劇「ブーフーウー」の人形デザインを手がけた人物です。

 

 このポスターで宣伝されている公演は、ある特別な意味をもっていました。

 年の記載はないですが昭和22 (1947)年4月公演、終戦から2年近くになるころです。会場は東京・有楽町にあった、日劇(にちげき)の愛称で親しまれた日本劇場。お詳しい方ですと、これでピンとくるかもしれません。

 実はこちら、終戦後はじめて東京で行われた宝塚歌劇公演のポスターなんです。東京公演は、昭和19年1月以来でしたので、およそ3年ぶりのお目見得。ホームグラウンドの東京宝塚劇場はGHQに接収されていたため、再開公演は日本劇場で行われることになりました。

 宝塚大劇場では1年前からすでに公演が再開していました。その様子を耳にして、宝塚歌劇団の上京を今か今かと待ちわびる人々にとって、このポスターは「東京でもいよいよ!」という、うれしい知らせを届けるものだったんです。

 

 時代背景や、当時の人々の気持ちを想像しながら、このポスターを見ると、ちょっと違って見えてきませんか?

 

 こちらのポスターも撮影を行い、いずれ、阪急文化アーカイブズで公開の予定です。

 

 

 

(司書H)