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池田文庫の本棚放浪記【第5回】~雑誌『暮しの手帖』~

『暮しの手帖』が創刊70周年を迎えたそうです。この機に池田文庫で所蔵している『暮しの手帖』を読んでみることにしました。

『暮しの手帖』といえば、どんなイメージが浮かびますか?

生活の工夫や知恵を指南してくれる家庭的なイメージでしょうか。

藤城清治さんの影絵物語などからくる幻想的なイメージでしょうか。

名物コーナー「商品テスト」で商品を徹底的に検査し、メーカーに檄を飛ばす硬骨の雑誌というイメージでしょうか。

 

 今回手に取ったのは1980年代のもの。自分の最も古い記憶の残っている時代、というのが理由です。

 料理やDIYなどに関する記事は今でも役に立ちそうですが、特に興味を引かれたのは商品テストや買物案内でした。今となっては古い情報ですから、買い物の役に立つわけではありませんが、暮らしの道具や機器の移りかわりをじかに知る資料としては、一見の価値ありです。

 同種の商品を、微に入り細をうがつように比較分析、批評してくれていますので、読むうちに、「そうそう、こういう風に使っていた」「使う時こんなことを思った」など、いろいろな記憶がよみがえってきます。

 たとえば、二槽式洗濯機の洗濯槽から洗濯物をひっぱり出して脱水槽に押しこむときの重み。小学校低学年ごろクラスを席巻していた、いろんな場所が開閉する複雑なしくみの筆箱のことと、それを用もないのにむやみに開け閉めして遊んでいたこと。プリントゴッコでは、製版時にピカッと漏れる光の強さや、最初の刷りあがりを見るときのドキドキ感。

 ともすると場所や周りにいた人、それにまつわる事件など芋づる式に湧いてきて、思いがけない記憶まで掘り起こされました。

 

 暮らしの道具は手をわずらわせない方へ、どんどん進化しています。しかもインターネットとモノがつながって一つの機器を触るだけであらゆるものを動かす時代にさしかかっています。

 その時、その場、指一本で。確かに便利にちがいないですが、記憶が身体の感覚をともなうことでより強く刻まれるとするなら、その刻み具合が、昔とくらべてずいぶん浅くなってしまった気もします。指タップ一つで動かしたモノを、それにまつわる風景を事件を、はたして記憶できるか…まったく自信がもてません。『暮しの手帖』の中で再会した、そこそこ手をわずらわせる道具たちが名残惜しくも感じられたのでした。

 

 さて、池田文庫では『暮しの手帖』を、1948年9月の創刊号から2012年2・3月号までをほぼそろえて所蔵しています。まれに欠号があったりもしますので、詳しい所蔵状況を知りたい方は蔵書検索をご利用ください。

 小林一三も一度、この雑誌に文章をよせています。どんなタイトルで、何年何月号に載っているかを調べられます。気になりましたら、ぜひ一度検索してみてください。

 『暮らしの手帖』ではなく『暮しの手帖』。「ら」抜きです。ご注意を。

 

 

(司書H)