阪急文化財団ブログ

池田文庫の本棚放浪記【第34回】一見さんも、お気軽に

 お隣の逸翁美術館で行われていた『ひゅうどろどろ怪奇まつり~歌舞伎に出てくるオバケだぞ』展が終了しました。展示期間中、池田文庫でも「お化け」をあつかった本の特集コーナーを設け、美術館でもそれを紹介してもらったところ、たくさんの方にお立ち寄りいただくことができました。

 ふだん池田文庫にお越しになる人は、阪急電鉄、宝塚歌劇、歌舞伎、民俗芸能などの中から、「池田文庫でこれを調べたい!」と目的がはっきりしている方が中心。今回のように、美術館帰りの方が、興味を持つ本とは・・・と注目しておりましたが、特集のお化けコーナーの次に人気があったのは、『別冊太陽』シリーズでした。

 『別冊太陽』というと、歴史・生活・文化・芸術などから毎号一つテーマをたくさんの図版と共に紹介する出版物で、ご存知の方も多いでしょう。

 こちらを置いている図書館は珍しくありません。ところが、これを図書として個々のテーマにちなんだ分類のもとに配架するのか、シリーズまたは逐次刊行物として、かためて配架するのか。図書館によって対応が分かれるようです。

 池田文庫では、このように『別冊太陽』シリーズをかためて配架しています。最初これを見たとき、個々のテーマで分類・配架した方が便利なのではないかと思っていました。ところが、「ここはどんな図書館だろう?」と池田文庫へぶらり訪れた方にとっては、このコーナーは手に取りやすい雰囲気が出ているようです。

 例えば書店や馴染みの図書館の新書コーナー。さまざまなテーマがぎゅっとひしめく棚は、自分の興味のあるテーマの本を探すとともに、背表紙を眺めながら新たに関心を向ける対象との出会いも楽しい場所です。

 池田文庫の小さな開架スペースのなかで、様々なテーマが横並びになっている『別冊太陽』の棚は、どうもそういう役どころを引き受けているようにと思っています。

 普通なら手に取って面白そうならとそのまま、購入または貸出という流れになるのでしょうが、池田文庫では貸出を行っていません。館内で読んでもらうことになります。そんなとき『別冊太陽』の美しいカラー図版中心の内容は、気軽にのぞきにきた人にも「ちょっと読んでいくか」という気にさせるのでしょう。

 これをきっかけに、意外にバラエティに富んだ池田文庫の蔵書へと、ぜひ興味を広げていただけるといいなあと、今は思うようになりました。

 長年、池田文庫にぶらりとやってきた来館者をとらえては、ついつい長居させてきた『別冊太陽』。いつのまにか600超のタイトルをもつ大きなコレクションになってきました。あれもこれもと手をのばしたくなる魅力的なタイトルが並んでいますので、たまに蔵出しして、手に取っていただけるようにしたいと考えています。

 


過去には宝塚歌劇の特集も

 

(司書H)