阪急文化財団ブログ

池田文庫の本棚放浪記【第17回】~ドンブラコ~

北村季晴作の歌劇『ドンブラコ』。

この作品は大正3(1914)年4月に披露された宝塚少女歌劇第一回公演の演目の一つです。

宝塚新温泉の娯楽施設の室内プールを劇場に転用したという印象深いエピソードとともに、ご記憶の方は多いかもしれません。

管絃合奏や合唱にダンス、喜歌劇も同時に上演されていますが、5場からなる『ドンブラコ』は構成の中心だったといえます。

 

宝塚歌劇団の年史類をひらくと、桃太郎をはじめ登場キャラクターに扮する少女たちの初々しい姿を目にすることができます。もっと『ドンブラコ』について知りたいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

どんな内容で、誰がどんな役をしていたのか。そんなことも分かるのでしょうか。

実のところ、宝塚歌劇の資料を集中的に収集する池田文庫においても、『ドンブラコ』を伝える資料というのはきわめて少ないのです。

公演ポスター、プログラムは所蔵していません。当然ながら、機関誌『歌劇』もまだ創刊されていません。

 

池田文庫所蔵資料の中で、当時の公演を伝えるものとして挙げられるのが、『山容水態』。かつて箕面有馬電気軌道(現・阪急電鉄)が発行していた沿線案内パンフレットです。

現在『TOKK』という阪急の沿線情報をのせた冊子が発行されていますが、『山容水態』も、阪急草創期の沿線情報誌と考えていただくと、わかりやすいかもしれません。

 

  上は、『山容水態』大正3年4月号 (複製資料を撮影)。宝塚新温泉で行われていたイベントが特集されています。その一つとして宝塚少女歌劇第一回公演を紹介し、少女たちの西洋音楽へのチャレンジを高らかに宣伝しています。演目や配役も詳しく伝えています。   作品そのものを知るには、次のような資料もあります。  
  この本は明治45(1912)年3月に刊行されました。楽譜、脚本、舞台装置例もついていて、これをもとに『ドンブラコ』の上演ができるようになっています。第一回公演にかかわった人たちがお手本にしたのも、こうした類いの本だったかもしれません。池田文庫が所蔵しているものには、「聲音之部」とあり、楽譜は歌部分のみです。   キジ、猿、犬がおのおのの鳴き声で合唱しつづけるところは、ユニークで興味をひかれます。なかなか難しそうにもみえますね。  
  100年を越える宝塚歌劇の歴史。そのはじまりはこんなに素朴でかわいらしい舞台だったのだと、今に伝えてくれる資料です。   ※ご紹介した資料は複製でご覧いただけます。       (司書H)