阪急文化財団ブログ

池田文庫の本棚放浪記【第16回】~小林一三翁に教えられるもの~

 阪急の創業者、小林一三についての本はたくさんあります。その中でも、直接かかわった人々が語るエピソードは、後世の人が小林一三を知るうえで、大切な証言といえます。

 

 こうした証言は、特に逝去した昭和32(1957)年、新聞・雑誌に追悼文としてたくさん掲載されました。親交のあった著名人たちによる追悼文集「小林一三翁の追想」という分厚い単行本もあります。

 

 今回ご紹介する『小林一三翁に教えられるもの』(1957年刊) もそうした追悼本の一つです。注目したいのは、小林一三の仕事ぶりを長く側で見てきた人が、一冊の本になるほどの量の言葉を残してくれたということです。

 

 

 著者の清水雅は小林一三に誘われ、昭和4年に阪神急行電鉄(現・阪急電鉄)に入社しました。のちには、阪急百貨店、東宝、阪急電鉄をはじめ、グループの数々の企業の要職を歴任した人物です。

 

 著者は、小林一三のアイデアのひらめき、仕事への情熱を目の当たりにしてきました。改善の余地を見逃さない鋭いまなざし。たゆまぬ研究心と改良の努力。それを周囲にも厳しく求めてゆきます。

 そんな小林一三に刺激を受けながら仕事に取り組んだ日々を、事業のウラ話をからませながら、親しみやすい文章で語っています。

 

 小林一三は60歳を過ぎてから、はじめて海外視察旅行にでかけますが、当時30代だった著者もこの旅に随行しました。この時の思い出は、特に印象深かったようで、本の中でもたびたび取り上げています。

 特別気に入って入手した骨董品をはなさず、旅行中ずっと手ずから持ち運びしていたことや、旅行中のほんの数日の間に、1冊分の原稿を書き上げてしまうほどの筆のはやさなど、小林一三の経営者以外の顔をとらえた印象的なエピソードも披露しています。

 

 故人と過ごした日々への愛惜とともに、その側で学んだことを次代の人に伝えたいという思いも込められた本です。

 

 この本の目次を目録に載せています。

 どんな話が載っているのか、気になりましたらコチラをご参考に。

 

 

 

(司書H)