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旧乾邸見学会~逸翁も訪れた茶室「不鬼庵」の面影を訪ねて~

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11月4日(金)に、神戸市の東灘区にある「旧乾邸」の見学会に参加してきました。旧乾邸は、阪急神戸線「御影駅」から徒歩10~15分くらいのところにある、とても素敵な洋館です。

この洋館を設計したのは渡邊節氏です。渡邊氏が設計した建物は、他には「旧大阪ビルヂング」「旧日本勧業銀行本店」「綿業会館」などがあります。阪神間モダニズムの建物としても知られており、一度見学してみたかっらので、特別公開に申し込んでみました。

それというのも、この旧乾邸の持ち主であった「乾豊彦氏」と一三翁は事業面だけでなく、茶友としても交流があったからです。乾豊彦氏は若くして乾汽船の社長になった人物です。

名古屋の高橋家から乾家に婿養子に入ったのですが、幼少期から書道、茶道、能楽などに親しんでいた文化人であったことから、一三翁を始めとする財界人との付き合いも活発にされていたのでしょう。

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惜しげもなく財をつぎ込んで建てられたというこの旧乾邸は、細かいディティールにもこだわって作られていて、アイアン装飾が本当に精緻でした。

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雅俗山荘にも共通するこの時代特有の華やかさと重厚さがとても素敵な建物でした。案内してくださった方は地元の方のようで、とてもお詳しかったです。一三翁もこのあたりを実際に歩かれたのかな、と思いながら当時の雰囲気を楽しみました。(実際に洋館に入られたかはわかりませんが)

各部屋に取り付けてあったというインターフォンは写真の様に使用人室で集約して見ることができるようになっています。これでどこの部屋でボタンが押されたのかすぐにわかるわけですね。

さて、一三翁が訪れた茶室「不鬼庵」ですが、残念ながら現存していません。今は写真の通り、茶室の跡があるだけなのです。

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一三翁が『大乗茶道記』にも収載されている昭和22年11月7日「乾山荘不鬼庵新席開き」に詳しく書かれています。

洋館はこの時GHQに接収されていたため、洋館横に建てられていた和館と茶室で持て成されたようです。写真の黒いビニールで囲われている部分に和館が建てられていたとか。

一三翁はこう書いています。

「寄付に通る路地の石段に打水の風情、苔蒸す四辺の風景は数十年の星霜を過ぎしと思うばかり。いとも古りたる数棟の数寄屋普請、寄付、腰掛、手洗所など外壁に沿うて巧みに配置され僅かに五六十坪の地域をお茶室に、広間に、苦心の甲斐あって茶境の別天地、お若い御主人の手腕只驚入るばかり、即ち茫然として寄付の前に立ち遠州公「閑」の一字額を見上げて佇むのみ」

今はない建物の様子がよく伝わってきますよね。1枚目の写真の左横奥に裏門があったので、その辺りから作り込んだそうです。

この時の茶会の内容も実によかったと見え、一三翁は大満足で帰路についた様子がわかります。

阪神大震災にも耐えた旧乾邸。これからも素敵な姿を維持していってくださることを願います。

(学芸員A)

IKEDA文化DAY 文化探訪ラリー

11月3日から6日まで池田市内では「池田文化DAY 文化探訪ラリー」が開催されます。

 

このイベントは今年でなんと第27回目。

市内各所に設定されたチェックポイントを巡り、各地で行われるイベントなどに無料で参加することができます。スタート地点はチェックポイントのどの場所からでもいいので、気軽に参加できます。

全部のチェックポイントで参加シールをゲットすれば、もれなく参加賞がもらえますし、抽選でステキなプレゼントが当たるチャンスもあります。

11月3日~6日はぜひ池田に訪れて文化に触れてみませんか?

詳しくはこちらから

(PDFファイルが開きます⇒http://www.azaleanet.or.jp/chirahi.pdf?platform=hootsuite

 

当館も参加しておりますので、ラリー参加者の方は現在開催中の秋季展「近現代絵画サロン 情熱と想像のコンチェルト」を無料でご覧いただけます。

この機会にぜひご来館ください。

 

(学芸員A)

館外展示のお知らせ<出雲文化伝承館>

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10月15日(土)より島根県出雲にある出雲市文化伝承館において開催される「茶のうつわ 向付と鉢」展に当館の収蔵品が出品されています。

出品しているのは、

・尾形乾山作 「龍田川文向付」

・黄瀬戸梅花文鉦鉢

・織部四方蓋物

の3点です。


向付は茶字で最初に出される”うつわ”で、終わりまで膳にあって亭主が最も心入れする道具の一つです。その種類は唐物から和物まで多岐にわたり、また形や図柄など楽しみの多い器です。

一方、鉢は焼き物、強肴、香物などを盛り、窯種も多岐におよび形も手鉢、平鉢、蓋付きなど多種多彩です。

茶事の料理の”うつわ”として洗練され、また数寄者たちが愛玩し大切に伝えてきた向こう付けと鉢を紹介して、茶の湯の奥深さと楽しさの一端にふれていただきます。またあわせて茶箱、茶籠の優品を展示します。


という展覧会のようです!

おりしも10月は他の地方では「神無月」ですが、出雲では「神在月」。

出雲大社詣でと一緒に出雲文化伝承館まで足を運んでみてはいかがでしょうか。茶室など見所充分ですよ。

11月27日までとなっておりますので秋の島根観光も楽しいですよ!

 

(学芸員A)

2016年度友の会観劇会Ver.2【永楽館歌舞伎ツアー】11月9日(水) 追加募集中!

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以前にもお伝えしましたが、この秋の観劇会は、出石の「永楽館歌舞伎ツアー」です。
人気の片岡愛之助丈の奮闘公演、ただいま追加募集中です!

只今ハッピーオーラあふれる片岡愛之助丈の座頭公演。この永楽館では毎年初役に挑戦されます。
今年は、松嶋屋さんにとって大切な演目『信州川中島合戦(しんしゅうかわなかじまがっせん)』より「輝虎配膳(てるとらはいぜん)」。
長尾輝虎(上杉謙信)が、武田信玄の軍師山本勘助を味方に取ろうと、勘助の母越路と妻お勝を招き、自ら料理を運んでもてなすのですが、その計略を見抜いた老母越路がお膳を足蹴に・・・(~続きは舞台で~)
とても歌舞伎らしい(当然ですが・・・)お芝居です。

さて、愛之助丈は、現在、新橋演舞場の十月花形歌舞伎「GOEMON 石川五右衛門」でも座頭として大活躍です。
永楽館の古典に対して、こちらはフラメンコを踊る石川五右衛門って・・・。
この斬新な作品を手掛けられたのは水口一夫先生。
永楽館の2つめの演目は、その水口先生が、曾我廼家五郎の喜劇作品を歌舞伎にされた「春重四海波(はるをかさねてしかいなみ)です。

ちなみに、曾我廼家五郎は、最初、中村珊之助という歌舞伎役者でした。
池田文庫でも、五郎の資料をまとめて所蔵していますので、2007年に「曾我廼家五郎の喜劇展」を開催しました。

そして、もう一つ忘れてはならない、永楽館名物「お目見得口上」。
個人的には中村壱太郎丈の「ゆるキャラ大合唱」が大好きです。
意味不明だと思いますが、これは永楽館歌舞伎ならではの異色の口上です。
今年は幸せ満載の愛之助丈がターゲットになるのでしょうか???

片岡愛之助丈、中村壱太郎丈、そして水口一夫先生、かつて阪急文化財団のイベントにご登場いただいた皆さまです。(いつもお世話になっております。)


近畿最古の芝居小屋で、バラエティに富んだ演目、この機会をお見逃しなく!


愛之助丈のサイン入り番付(プログラム)があたるかも?!

お申込み方法はこちらから

 

(学芸員T)

 

秋夜擣衣図

秋夜擣衣図

この図は、呉春筆「秋夜擣衣図」です。部分アップも載せておきますね。

茅屋の家の前で、1人の女性が月下のもと、砧を打っています。砧を打つ仕事は古来より女性の夜なべ仕事であり、灯火の節約や家人の邪魔にならないように月明かりの下、家の外で砧を打ちました。

砧は俳句では秋の季語であり、秋の夜長にもの悲しさを助長する音として捉えられています。冴えた月明かりの下、無声の絵画から砧を打つ音がきこえてくるようです。

この頃では砧を打つ音を聴くことも少なくなりましたね。

秋夜擣衣図

砧の音がYouTubeに上がっていたので参考までに・・。これは宮古上布の仕上げの砧打ちとなっているので少し趣きが違いますが、槌で布を打つ音はこういった音になります。

秋の夜長に聞くとまた違う風情があるのでしょうね。

 

 

(学芸員A)

館外展示のお知らせ <茶道資料館>

京都にある「茶道資料館」において9月22日から開催されている、平成28年秋季特別展「私の一碗」に当館所蔵の茶碗を出品しています。

出品しているのは、「五彩蓮華文呼継茶碗 逸翁銘・家光公」です。

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この展覧会は、代々受け継がれてきた大切な茶碗や、自ら作陶したお気に入りの茶碗など、自分にとってかけがえのない一碗を六十数名の方々が出品し、その茶碗の魅力や茶碗との出会い、心に残るエピソード等、出品者からの紹介文とともに展観されるそうです。

出品者は、個人所蔵家や、お茶人、千家十職、各美術館などさまざま。

 

どのような「それぞれの想い」が見れるのが楽しみですね。

 

館外展示のお知らせ<佐川美術館>

佐川美術館において10月1日(土)から開催される「三藏法師展 ―薬師寺の宝物とともに―」に、池田文庫の収蔵品が出品されています。

三藏法師展に何が??と思われるかもしれませんが、展示しているのはこちらの作品になります。

通俗西遊記

この作品は、周延画 大判錦絵三枚続 明治11年(1878)9月 市村座「通俗西遊記(つうぞくさいゆうき)」です。

描かれている人(ばけもの)は、右から

土蜘ノ精 初世市川女寅

三蔵法師 初世中村時蔵

孫悟空 市川権十郎

猪八戒 四世関三十郎

となっています。

薬師寺の宝物と一緒にならぶ役者絵って新鮮ですよね。この機会にぜひご覧ください。

 

ちなみに、この役者絵は2017早春展「化粧 KEWAI ―舞台の顔―」(仮)に出品する予定になっています。

こちらもお楽しみに!

 

(学芸員A)

平成29年 逸翁白梅茶会申込みについて

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毎年1度、小林一三の命日である1月25日に開催している「逸翁白梅茶会」。

平成29年1月25日(水)に通例通りに開催いたします。それに伴い、

10月1日(土)より

先着順にて申込みを受付ます。定員になり次第申込みを締め切ります。

 

実施日:  平成29年1月25日(水)  於:小林一三記念館「人我亭」 (雨天決行)

料金:  1名 1,000円(美術館へ入館されるお客様は美術館入館料を500円に割引)

担当:  裏千家 佐藤宗紀(そうき) 社中

 

逸翁美術館の所蔵品を使ってのお茶会はこの機会だけです。お気軽に参加いただける茶会ですので、ぜひお申し込みください♪

 

申込み方法は以下の方法のいずれでも受付可能です。


・往復ハガキの場合 

〒563-0058 大阪府池田市栄本町12-27

阪急文化財団 「逸翁白梅茶会係」 宛

 (※復信の宛先は必ず記入しておいてください)

・FAXの場合   

Fax 072-751-2427 

「逸翁白梅茶会係」 宛

・メールの場合  

Mail  itsuo-itsuoki@hankyu-group.jp

タイトルに「逸翁白梅茶会申込み」と入れてください。

・HPの場合

お問合せフォームから

お問合せ項目は「その他」にしてください。


いずれの場合も、

申込者の氏名、住所、電話番号(FAXでの返信を希望する場合は必ずFAX番号)、同伴者がいる場合の人数とその氏名

上記項目を必ずお書き添えください。

また、お電話での受付は一切お受けできません。

逸翁美術館、小林一三記念館の受付に設置してある申込用紙を使用していただくことも可能です。

 

 

予約票の返信は、

12月1日から5日の間に、

お申し込み頂いた方法にて返信いたします。

この期日を過ぎても返信がない場合は必ずお問合せ下さい。

予約票の返信が受け取れない場合は、当日ご参加いただけませんのでご注意ください。

 

<注意事項>

お申し込み受付段階ではこちらからの返信は一切いたしませんのでご注意ください。(返信は12月1日から12月5日の間に順次行います)

・メールやお問合せフォームからお申し込みの際は、必ずパソコンからのメールを受け取れる様にご設定いただくか、「hankyu-group.jp」のドメイン指定を解除してお申し込み下さい。こちらからの返信が受け取れない場合はご参加いただけませんのでご注意ください。

 

 

不明な点につきましては、お気軽にお問合せください。

皆様のお申し込みをお待ちしております。

 

(学芸員A)

友の会2016秋の見学旅行「逸翁交流の軌跡を辿る ~津・桑名編~」実施報告

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17日(土)は2016友の会秋の見学旅行「逸翁交流の軌跡を辿る ~津・桑名編~」を実施いたしました。

台風が近づいて来ていたため、天候の行方が心配されましたが、基本的にはほぼ全行程で雨に遭うこともなく無事終ることができて、ほっとしております。(高速道路をバスで走行中に一度ゲリラ豪雨のような雨に巻き込まれましたが)

まず、出発は朝の7時30分!この時点で三連休初日であったこと、また事故などもあり当初の予定ルートが混んでいましたので、運転手さんの判断により急きょ運行ルートを変更。結果大正解で、無事に予定通りの時間に1番目の目的地の石水博物館さんに到着しました。

石水博物館は一三翁とも茶友であった川喜田半泥子縁の博物館です。そこで現在開催中の展覧会「三重の先賢たち―士清・宣長・武四郎・・・近世から近代まで―」とその他に川喜田半泥子の作品を学芸員の龍泉寺さんにご説明いただきました。

その後再びバスにて今度は桑名を目指し、桑名と言えば・・焼き蛤で有名ですので、せっかく桑名に来たんだからと焼き蛤をいただきました。

昼ご飯を終えた後は、桑名市博物館さんにて「特別展 村正展」を学芸員の杉本さんの解説付きで観覧。昨今の刀剣ブームもあってたくさんのお客様が来られている中でのお話しに少し恐縮ですが、あまり普段刀剣を見る機会のない方にはとても為になるお話しだったと思います。

そして、最後の目的地「六華苑」へ。一三翁が若い銀行員時代に、銀行を訪れた初代諸戸清六氏から当地の名産である蛤のしぐれ煮の缶詰をもらっていたというエピソードを持つ館は、雅俗山荘とはまた違う和洋折衷の趣きでとても素敵でした。

少し遠出の見学旅行になってしまいましたが、事故なく無事に終えることができました。ご参加いただいた皆様、お疲れさまでした。

また来年も友の会では見学旅行を企画いたします。ぜひ、友の会にご入会いただき、一緒に旅行を始め、様々なイベントを楽しんでいただけたら幸いです♪

来年はどこに行きましょうかね‹‹\(´ω` )/››~♪

 

(学芸員A)

宝くじの日 ―歴史を見つめた籤棒のお話―

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9月2日は「宝くじの日」とのこと。宝くじではありませんが、ちょっと「籤」にまつわるお話しを。

当財団で所蔵している重要文化財「佐竹本三十六歌仙切 藤原高光」は、もともとは1つの巻物の形になっていました。三十六人の歌仙それぞれを描いた歌仙絵に、描かれた人物の略歴と和歌が一首添えられていました。

秋田の佐竹家から売りに出されたため「佐竹本」とも呼ばれたこの絵巻は、三十六歌仙絵巻の中では最も古いものと言われており、そのため売りに出された時はあまりに高価すぎたため、何人もの古美術商が共同で競り落としました。

この絵巻をその後に購入したのは、「虎大臣」との異名もとった山本唯三郎なのですが、彼もまた数年後に手放すことになります。しかし、あまりにも高価すぎて1人の収集家ではもはや購入することができない状況になっていました。

そこで考えられたのが絵巻を切断することです。今では文化財を切断するなど信じられないような暴挙と言われても仕方がありませんし、当時でも物議を醸したようですが、海外に流出してしまうよりはと、歌仙1人ずつ切断されました。大正8年(1919)12月20日、住吉大社を描いた図も含めて、全部で37分割されたのです。

この37図はそれぞれ籤によって購入者を決めることになりました。この時に使われたのが写真の籤棒です。

人気が高かったのはやはり、姫君たちであり、その次に公卿、僧侶はあまり人気がありませんでした。籤の結果、当時の大数寄者の1人でもあり、この切断にも大きくかかわった益田鈍翁が引き当てたのは僧侶の絵だったと言われています。(源順だったという説もあります)

鈍翁は一番人気の「斎宮女御」が欲しかったので不機嫌になってしまったのですが、そこは「斎宮女御」を引き当てた人が気を利かせて交換することで鈍翁の機嫌も治ったそうです。

そんな歴史の証人でもあるこの「籤棒」。籤で一喜一憂する大人たちをどの様な思いで見つめたのでしょうか。

 

ちなみに、この時、小林一三は籤には参加していません。当時参加していた古美術商から後になって購入しました。

 

 

(学芸員A)