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「高校野球発祥の地記念公園」竣工式

4月6日、豊中市の「高校野球メモリアルパーク」が敷地を広げて、「高校野球発祥の地記念公園」としてリニューアルされました。その竣工式典に参列させていただきましたので、その様子をご紹介しますね。

会場は豊中駅から西へ徒歩10分ほど。豊中駅からまっすぐのびた道を進んでいきます。

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沿道には、かつて箕面駅前にあった「カフェ・パウリスタ」を移築した「豊中倶楽部自治会館」があります。現在はご覧のとおり新しく建て直されています。

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そして会場に到着!

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阪急文化財団所蔵の「豊中運動場平面図」もご覧のとおり、陶板にされて地面に埋め込まれました!

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高校野球の全国大会が初めて開催された場所、それがこの「豊中グラウンド」(豊中運動場)なのです。

1913(大正2)年、箕面有馬電気軌道(現阪急電鉄)によって設営されたグラウンドで、高校野球のみならず、高校サッカー、高校ラグビーの全国大会発祥の地としても知られています。

他にも、日米野球戦や「日本オリンピック大会」など、様々なスポーツイベントが開催されていました。

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記念公園のおすすめポイントはこの「レンガ」です。グラウンドがあった当時のものと言われており、跡地にお住まいの方々が、大切に保管されていたものです。

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また、歴代優勝校と準優勝校のネームプレートも新たに設置されました。

第1回優勝校・京都二中から、昨年の作新学院(栃木)まで、ずらりと並んでいます。あと100年分はスペースがあるそうです!

 

これからも、高校野球ファンや地域の方に愛される公園であり続けますように。

 

(学芸員Y)

 

阪急文化アーカイブズの使い方

■横断検索
トップページの横断検索では【阪急・宝塚ポスター】【浮世絵・番付】【民俗芸能】の3カテゴリの全項目をまとめて検索できます。複数のキーワードをスペースで区切ると、それらのキーワードをすべて含む資料が検索できます。

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カテゴリを限定して検索することもできます。各カテゴリのキーワード欄に入力して検索してください。複数のキーワードをスペースで区切ると、それらのキーワードをすべて含む資料が検索できます。
PC版では【阪急・宝塚ポスター】の「路線図から検索」や【民俗芸能】の「地図から検索」機能が使えます。

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PC版のテキスト表示・芸能別表示では、項目名のクリックで並べ替え(昇順・降順)ができます。

■検索結果(詳細)
検索結果の画像やテキストをクリックすると、大きい画像と詳細情報が表示されます。
「館内限定公開」の資料は、池田文庫設置のPCやマイクロリーダ等で閲覧できます。ただし資料によっては予約や紹介状が必要ですので、事前にお問い合わせください。【民俗芸能】はすべて館内限定公開です。

■詳細検索
項目を指定して検索する場合は、各カテゴリの「詳細検索」をお使いください。スペースで区切られた同一項目内のキーワードや、複数項目に入力されたキーワードに対し、「いずれかに該当する条件で検索」または「すべてに該当する条件で検索」が可能です。

◆項目ルール
各カテゴリの項目ルールは以下のとおりです。検索・閲覧にお役立てください。

【阪急・宝塚ポスター】

キーワードカテゴリ内の以下の全項目を検索できます(検索画面のみ表示)
分類ポスター内容分類から選択
クレジットアートディレクター、デザイナー、イラストレーター、フォトグラファー等、制作者の名
イベント開催年やポスターの制作・掲出年(yyyy形式)
期間・以降・以前で検索できます
年月日イベント開催等の年月日(yyyy/mm/dd形式)
場所イベント開催地や関連する場所
被撮影者ポスターに写っている人物の名
タイアップタイアップの社名や商品名
内容イベント名、キャッチコピー等の文字情報
検索の便を優先し、適宜省略または補足しています
演目*演劇のタイトル、副題、宝塚歌劇のジャンル表記
幕・場・景*演劇の幕数、場数、景数
劇団・主催*演劇の上演団体名
組*宝塚歌劇団の組
スタッフ等*演劇の作者、演出者、原作者等
判型・寸法ポスターのサイズ
阪急最寄駅イベント開催地の最寄駅(阪急・能勢電鉄等)
原則としてポスター記載情報に準拠していますので、現在と異なることがあります。阪急・能勢電鉄からバスやケーブルに乗り換える場合、その乗換駅を最寄駅と見なしています。ポスターに記載がないものも、他の資料や慣例に基づき目安として最寄駅を入力しています。

*の項目は、詳細情報画面では「演目情報」としてまとめて表示されます

【浮世絵・番付】

キーワードカテゴリ内の以下の全項目を検索できます(検索画面のみ表示)
分類役者絵・絵看板・各種番付から選択
No.登録番号
絵師絵師名 代数は[ ]内に表記
上演年(西暦)上演あるいは制作された年(yyyy形式)
期間・以前・以降で検索できます
上演年(和暦)上演あるいは制作された年(和暦yy形式)
上演月日上演あるいは制作された月日(mm月dd日形式)
上演場所劇場名、地域名
劇場名は「芝居」「座」等を省略し「中」「角」等と入力しています。詳細検索では、この項目のみ完全一致で検索を行います。地域名は原則として上演当時の呼称を用いていますが、便宜上1868年を境に大坂/大阪、江戸/東京と分けています。
外題上演作品のタイトル
読み仮名は( )内に表記
幕・場名上演作品の幕名・場名
役者(役名)役者名と役名
役名は( )内、役者の代数は[ ]内に表記
画題・画中文字画中の文字を表記どおりに記したもの
判型・技法判型・技法
落款・印章落款・印章
摺師・彫師摺師名・彫師名
版元・発行人版元・発行人
改印浮世絵の発行許可印
番付ジャンル番付に記載されている演劇・芸能のジャンル
番付劇団名番付に記載されている上演団体名

【民俗芸能】

キーワードカテゴリ内の以下の全項目を検索できます(検索画面のみ表示)
分類民俗芸能分類から選択
三隅治雄『日本民俗芸能概論』の分類法に基づいて作成された、池田文庫編『日本民俗芸能資料目録(改訂版)』の分類を採用しています
芸能名芸能名
演・曲目芸能の演目・曲目
別名芸能の別名
詳細検索では、芸能名欄で検索できます
芸能所在地芸能の伝承地
取材当時の地名を採用しています
取材年芸能を取材した年(yyyy形式)
期間・以前・以降で検索できます
取材年月日芸能を取材した年月日(yyyy/mm/dd形式)
取材場所芸能を取材した会場
現地で取材したものは「現地取材」、提供を受けたメディアを再録したものは「宝郷」と入力されています
催会名芸能が上演された催事名・大会名
提供を受けたメディアを再録したものは「再録」と入力されています
プログラム催事・大会プログラムの所蔵の有無
所蔵資料池田文庫所蔵資料
「DVD」は映像資料、「DAT」は音声資料、「35ミリアルバム」と「スライド台紙」は写真資料、「レポート」は取材者が作成した報告書です

2017年3月公開

2023年1月更新

年間パンフレットができました

60周年パンフレット 

 

60周年の年間スケジュールができました。

これがあれば、どの指定文化財がどの展覧会に出るのか一目でわかります!

2017年度は展覧会と展覧会の間の休館日がいつもよりかなり少なく、小刻みに展覧会を行います。

1つの展示の中では展示替えはありませんので、どのタイミングでも、その展覧会に出品する指定文化財や代表的な作品を見逃すことはありません。

ただ、小刻みに変わるため、見たいと思っていた作品の展覧会がすぐ終わってしまうということもありえますので、注意してくださいね!

 

 

(学芸員A)

\逸翁美術館開館60周年記念展スケジュール公開/

佐竹本三十六歌仙切
大江山絵詞
豊臣秀吉画稿
奥の細道画巻
白梅図屏風(右)
花鳥蒔絵螺鈿洋櫃

逸翁美術館は小林一三が亡くなった1957年10月3日に開館し、今年で60周年を迎えます。

その60周年を迎えることを記念して、来年度は「逸翁美術館 開館60周年記念展」として、6つの展覧会を開催します。

所蔵している重要文化財や重要美術品を6つの展覧会に分けて展示します。どの展覧会も見逃せない展示ばかりですよ!

細かいイベントなどは決定しだいそれぞれお知らせするとして、今回は展覧会スケジュールをお知らせします!

第一幕 THE 書 ~数寄者が集めた古筆、お見せします~

会期 2017年4月8日(土)~5月28日(日)

流麗な筆致、工夫を凝らした料紙、古人の遺した美しい書の数々は、書の愛好者のみならず茶の湯の世界でも愛好されてきました。数寄者をも魅了した書の作品をご覧ください。

佐竹本三十六歌仙切
谷水帖 石山切
継色紙

第二幕 開け!絵巻

会期 2017年6月10日(土)~7月30日(日)

説話や物語の場面場面を、絵画にも表す絵巻。見進めるにつれ、作品の世界に知らず知らずの内に入り込んでしまいます。細やかに描かれた人物・場景・季節などが次から次へと現れ、私たちの眼を楽しませます。

この展示では、重要文化財に指定された経巻も併せて陳列し、巻物形式の作品の淵源を示すこととします。

 

大江山絵詞
芦引絵

第三幕 茶の湯道具始 -ようこそ収集家の世界へ!-

会期 2017年8月26日(土)~10月15日(日)

小林一三(逸翁)が収集した作品の中には、数多くの茶道具があります。茶の湯を愛した逸翁は、集めた様々な道具を用いて茶会を開き、多くの数寄者と交流しました。

その逸翁が集めた茶道具の中から道具始(どうぐはじめ)として、茶の湯の流れと道具をご紹介します。収集家(コレクター)の世界をご堪能ください。

豊臣秀吉画稿
黒樂茶碗 千鳥
長次郎作 赤樂茶碗銘「常盤」

第四幕 ひねもす蕪村 絵と俳句

会期 2017年10月28日(土)~12月17日(日)

松尾芭蕉を慕った与謝蕪村、そして蕪村を敬った呉春。俳句や絵画を通じて感興を深め合った彼らの交遊を、数々の作品から探訪します。さらに、多くの門人たちによって表される情趣のヴァリエーションからは、蕪村世界の広がりが感じられます。

句は画のごとく画は句のごとく、香り高い近世の俳人・画人たちの心の動きに触れてみてください。

奥の細道画巻
晩秋遊鹿図屏風(右)

第五幕 応挙は雪松、呉春は白梅

会期 2018年1月20日(土)~3月11日(日)

円山四条派コレクションとしては日本最大規模を誇る蔵品の中より、応挙の創始した円山派と呉春の創始した四条派、ともすれば1つとして語られがちな2つの流派。

それぞれ代表作を展示することにより同時代を駆け抜けた画家たちが織りなす華やかな京都画壇の魅力を紹介します。

雪中松図屏風(右)
白梅図屏風(右)

One more 未来につなぐ 和の意匠(デザイン)力

会期 2018年3月24日(土)~5月6日(日)

縄文・弥生、はるか昔に作られた物の姿や図柄に、現代の私たちもまた新鮮な印象を覚えます。それぞれの時代の日本人が生み出した文様や意匠は、歴史の中で繰り返し用いられ、様々な美術工芸品の上に形を変えて親しまれてきました。

本展では「平明」「遊楽」「静寂」の3つのテーマで作品を選び、未来につなぐ和の意匠(デザイン)力を示してみたいと思います。

花鳥蒔絵螺鈿洋櫃
三十三間堂通矢図屏風

逸翁白梅茶会を終えて

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昨日、無事に今年の「逸翁白梅茶会」を終えました。

ここのところ強い寒気が日本列島に流れ込んできているとのことで、かなりの寒さが予想されていて、前日までに通常よりもキャンセルのお電話が多くありました。

中には道路の凍結や雪によって、交通事情が難しいという方もいらっしゃり、そんな遠方からご来館いただける予定だったことにうれしさを感じましたが、天気ばかりはままならず残念です。また来年のご参加をお待ちしたいと思います。

雪が積もっていたら凍結が心配だったのですが、幸いにも前週のように雪が積もるところまではいかず、なんとか無事に開催できました。

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今年は酉年。一三翁は生まれも亡くなった年も酉年です。お道具組は実際に一三翁が酉年に初釜で開催されたお道具組をほぼ再現いたしました。

写真にありますように床の掛け軸は松花堂昭乗の「鶏図」、香合は古染付の鵯香合でした。取合の古伊賀の花入に今回佐藤先生が生けてくださったのは、椿と梅です。

厳しい寒さの中、大勢の方にご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

 

(学芸員A)

『阪急文化研究年報』5号を発行しました

年報5号

これは2015年度に開催した展覧会やイベントの報告と、

学芸員の調査研究活動の成果を発表するものです。

収録内容は次の通りです。

 

 

■論文

宮井肖佳/小林一三の目指した文化ネットワークとその意義(四)-小林一三の愛した更紗 コレクションの形成-

竹田梨紗/「芦葉会記」に関する一考察(一)-昭和十六年から二十年まで-

正木喜勝/草創期宝塚少女歌劇上演目録補遺

 

■資料紹介

仙海義之 連載(一)「十巻抄」一〇巻(重要文化財)第一巻・第二巻

 

■平成27年度年度事業報告

 

 

本誌は池田文庫でご覧いただけます。

また一部の大学・公共図書館でもお読みいただけますが、

所蔵館や配架状況については各館の蔵書検索等でご確認ください。

 

(学芸員Y)

「べっぴんさん」と阪急百貨店

現在も大好評放送中の、連続テレビ小説「べっぴんさん」。ファミリアを創業した4人の女性のうち、坂野惇子さんをヒロインにしたドラマです。

ツイッターの方でも「べっぴんさん」について色々とつぶやいているのですが、このドラマでは阪急百貨店をモデルにした「大急百貨店」と、当時の社長清水雅氏をモデルにした、伊武雅刀さん演じる「大島社長」が登場します。

清水雅氏は、一三翁の秘書とし外遊にも随行するなどした人物で、一三翁より様々な薫陶を受けたことでも知られています。

中でも印象的なエピソードは外遊から戻ってくる航海中の船上において、一三翁は食べたカレーの味に感動し、その作り方を習ってくるように求めます。暑いインド洋の船上で、キッチンに押しかけてそのおいしい作り方などを探ったと言われています。

おいしいと評判だった阪急百貨店大食堂のカレーライスには、こういった清水氏の苦労や努力なども生かされています。

そんな社長とのかかわりがドラマで描かれるとのことで毎朝楽しみにみているのですが、嫌味な担当さんがいたり、周囲の売り場の人たちもどこか冷ややかだったりと、初めての大きな商いに戸惑いを隠せない主人公達ですが、徐々に商売人としての自覚が出てきているようですよね。

ファミリアさんの東京出店エピソードとかも描かれますよね、きっと。(東京出店ならば、数寄屋橋阪急の話が出てくるはず)

去年放送されたドラマ「経世済民の男 小林一三」で阪急百貨店外観として使われていた建物が大急百貨店として登場していてそういった繋がりも楽しいです。

今後、大島社長はじめ、大急百貨店とどのような関わりが描かれるのかも含めて楽しみです!

(学芸員A)

 

 

 

芝居小屋「呉服座」

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月曜日の休みを利用して愛知県犬山市にある明治村に行ってきました。明治村の中には近代に建てられた貴重な建築物が移転され保存公開されています。

この中に、池田に元々あった芝居小屋「呉服座」も移築されています。呉服座は江戸時代以来の伝統建築の名残を留めていて、元々は明治の初め頃、池田の戎神社の近くに建てられていたそうです。この時は「戎座」と呼ばれていていましたが、明治25年(1892)に西本町猪名川の川岸に移り、その時に「呉服座」と名を改めたと言われています。

写真は現在の呉服座の跡地です。この辺りに建っていました。国道176号線の呉服橋を池田側に渡ってすぐの川沿いの道を南に20メートル程度下がった辺りにあります。今はこんな風に碑が建てられているのみです。奥の方に阪急電車の高架が見えるのがわかりますでしょうか。

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ここでは地方巡業の歌舞伎や、壮士芝居、新派、落語、講談、漫才等様々なものが演じられていたようです。

明治村のHPにある呉服座の説明には、次の様に書かれています。

構造は木造二階建杉皮葺で、舞台、客席部分には大きな切妻屋根を架け、その前に軒の高い下屋を降ろして、小屋の入口にしている。正面の高い切妻には太鼓櫓を突き出し、入口下屋の軒下には絵看板を掲げている。正面の壁は黒漆喰塗で、腰には和風の下見板が建て込まれている。出入口の扉は、裏面は和風の舞良戸であるが、表面には洋風の枠飾り等を施しており、目新しさを感じさせる。
奈落は舞台の袖から降りて、廻り舞台の下を通り抜け、花道づたいに入口近くの楽屋の下まで達している。廻り舞台は、円周に沿って取り付けられた車と中心軸とで支えられている。

客席は、平場(平土間)と呼ばれ、桝席に区切られている中央の低い部分と、棧敷と呼ばれる廻りの部分からなる。
このような芝居小屋では、楽屋は舞台の裏手等に設けられるのが普通であるが、この呉服座では入口土間の上にあり、役者は奈落を通って舞台袖に行くようになっている。

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呉服座は重要文化財指定を受けている建物です。当時の面影を伝える貴重な建築物は、維持管理が非常に大変なのですが、明治村さんで大切に保存公開されています。

移転は昭和46年(1971)、重要文化財指定を受けたのはそれからもう少し後の昭和59年(1984)のことです。池田の街から離れてしまいましたが、かつて池田にあった建物として今後も生き続けてほしいなぁと思いました。

 

(学芸員A)

2016年度友の会観劇会Ver.2【永楽館歌舞伎ツアー】報告

7おまけ辰鼓楼

今回の観劇会は、阪急観光バスで、兵庫県豊岡市の出石永楽館まで遠出をしました。
暑さも寒さも、日本一、二を競う豊岡市。この日の気温は、最高が9度、夕方には5度・・・。
小雨が降ったりやんだりで、なお一層寒さが身にしみる日でした。

今回は、お芝居だけでなく、普段聞き逃しがちな歌舞伎ならではの「音」にも注目しましょう!ということで、まずは地元の青年会の皆さまが打たれる「おふれ太鼓」を見学しました。
そして開演30分前に演奏される「着到」は、履き物を脱いだり、席への移動で一番賑やかな時ですから、ちょっと聴き取りにくかったかもしれません。

1バス出石到着
2おふれ太鼓

さて、近畿最古の芝居小屋 永楽館の中へ入ると、明治期にタイムスリップしたような温かみのある小屋です。
なによりも、どこから観ても舞台が近い!中村壱太郎丈や上村吉弥丈が通られるたびに、打掛のふきが私の荷物を引きずらないようによけていました。近すぎ・・・。

3館内C
3館内B

そして、いよいよ役者さん全員が初役で挑まれる「信州川中島合戦 -輝虎配膳-」です。
片岡愛之助丈は、品位と威厳のある輝虎が、怒りにワナワナと震えるお姿を、そして、壱太郎丈のお勝は、器用にお琴を弾きながら詫びる健気な嫁を演じられ、吉弥丈の越路は、輝虎が運んだお膳を足蹴にする時、一瞬顔を背けて申し訳ないような表情をされたのが印象的でした。
絵になる場面がいくつもある古典です。

幕が閉まると、「砂切(しゃぎり)」を聴いて幕間へ。
地元の食材ばかりで作られた「葵」さん特製「永楽館歌舞伎観劇弁当」をいただきました。

4お弁当

次は永楽館歌舞伎名物「お目見得口上」。毎年大盛り上がりの口上です。吉弥丈の「ああ上野駅」出石バージョン大熱唱も聴かせていただきました!(永楽館未体験の方は状況がつかめないと思いますが・・・。)

次は水口一夫先生が喜劇を歌舞伎に書き替えられた「春重四海波(はるをかさねてしかいなみ)」。
幕あきから大爆笑で、愛之助丈は、高速で70歳まで歳を重ねた、ちょっと頼りないけどかわいいお爺ちゃん。壱太郎丈は、愛らしい娘さんから、艶のある中年、そして白髪のお婆ちゃん。ご両人が本当に仲睦まじく、大爆笑の後にジワッと温かくなるお芝居でした。

幕が閉まり、「打出し」を聴いた後も客席の拍手は鳴り止まず、歌舞伎としては珍しいカーテンコールがありました。

古典の「輝虎配膳」は往路のバス内で見どころをお話ししていましたが、わかりやすくて笑える「春重四海波」は観てのお楽しみということで、あえて何もお話しせずに観劇。この二本の組合せと名物口上に、参加者の皆さまにはとても楽しんでいただけました。

 

5豊岡市立美術館

終演後は、各自出石の町を散策。豊岡市立美術館 -伊藤清永記念館-の「歌舞伎衣裳展」などを鑑賞しました。また、ここには永楽館歌舞伎の第一回(2008年)と、第八回(2015)の絵看板も展示されていました。第一回が穂束とよ國氏、第八回はご子息の穂束宣尚氏の作品です。
阪急文化財団でも明治期の絵看板コレクションがあり、とよ國先生には種々ご教示いただいておりました。1点だけですが、とよ國氏のお父様の穂束信勝氏の作品も所蔵しています。
とよ國氏は、永楽館の他にも、南座、松竹座など多くの劇場の絵看板を手掛けられ、2014年に急逝されました。その年から急遽宣尚氏に代わられ、お父様の作風をしっかり継承されています。
お二人の作品が横に並べられたのを、とても感慨深く拝見しました。

最後のお楽しみは、復路のバスで抽選会!愛之助丈のサイン入り番附をプレゼントです。番附の「勧進帳」富樫の写真にサインをしてくださいました。  

途中「道の駅 まほろば」でお土産を買い込み、19時過ぎに池田到着。

お芝居好きの方も、今では便利で快適な劇場に慣れていらっしゃると思います。現代人にとって、昔ながらの芝居小屋は少々窮屈で不便なこともありますが、舞台や役者さんとの実際の距離が近いだけでなく、「歌舞伎」が今よりもっと身近な存在であった時代にワープしたようで、もっともっと気軽に歌舞伎を楽しむきっかけとなれば嬉しく思います。そして、役者絵や絵看板など、当財団の所蔵する歌舞伎資料にもご興味が増していただければ、さらに嬉しく思います!

皆さま遠方まで、長時間お疲れ様ございました。

 

(学芸員T)

綿業会館見学

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11月4日(金)は朝に「旧乾邸」、夕方からは「綿業会館」の見学に行ってきました。「綿業会館」は、「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2016」に参加させていただきました。

応募者多数だったらしく、当選できて本当によかったです!

この「綿業会館」を設計したのは、渡邊節氏です。そう、旧乾邸と同じ設計者の方になります。個人用に作った建物と、公的な意味合いの強い建物、同じ設計者でも違った風情になっていてとても楽しかったです。

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とても重厚な作りで重々しい雰囲気でした。中央の銅像はこの会館を建てるために多額の寄付をされたという、東洋紡績専務取締役・岡常夫氏です。

この綿業会館は外向きには質実剛健なオフィスビルという感じですが、一歩中に入るととても豪華です。各国の来賓の方をおもてなしすることもあり、部屋ごとに装飾のティストを変えているのも見所です。

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ここでどんな話がされていたんでしょうか。当時に思いをはせながら見学させていただきました。また綿業会館は、昨年NHKのドラマ「経世済民の男 小林一三」のロケ地になっていたので、あの場面で使われていたなぁと思いながら懐かしく見ていました。

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また、3階のお部屋では一三翁の芳名帳も確認できました。見つけた瞬間ニヤニヤしてしまったのは内緒です(笑)

 

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一三翁の上の方にそうそうたる方々の名前が見えますね。

「天てらす 二百十日も 無事なりき」ですね。

二百十日とは、立春を基準として数える雑節の一つで、だいたい九月一日頃になります。この日は台風が来て天候があれやすいとされていて、そのため「無事」という言葉が使われたのでしょう。実際、一三翁の日記にも九月一日は無事好天気との記述が見られることがあります。

日にちが・・・・・昭和甲辰九月一日と読めるのですが、昭和の甲辰だと亡くなってから後の昭和39年になってしまうので、辰年は合っていて十干を勘違いされてたんでしょうか・・。

ともかくも、一三翁も来られていたことが実感として伝わりとてもうれしかったです。

 

(学芸員A)