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池田文庫の本棚放浪記【第32回】~歌舞伎やタカラヅカ以外の公演プログラムも鋭意整理中!~

 池田文庫が所蔵する演劇資料というと、宝塚歌劇や、江戸から明治にかけての歌舞伎に関する上演資料を思い浮かべるのではないでしょうか。実際、池田文庫としても、その二つを特色あるコレクションとして紹介することが多く、資料整理の現場でも、優先して作業を行ってきました。

 

 一方で、それ以外の演劇資料もまた、豊富に所蔵しているんです。それは主に関西や東京を中心に、大正から平成にかけて行われた公演のプログラム類なのですが、まだ整理を終えておらず、現在も目録作成作業が進行中です。

 

 池田文庫では、劇場名をタイトルとし、個々の公演がその下に集合する体系で、これらを整理しています。現時点で劇場タイトルは300超。1公演の資料だけ収録する劇場タイトルもあれば、数百点もの上演資料を収録する劇場タイトルまで様々です。

 

 大正から平成の歌舞伎はもちろん、文楽や日舞、洋舞、オペラにコンサート。劇団民芸や文学座、俳優座などの新劇。新派、新国劇、前進座や、松竹や東宝が製作の現代劇やミュージカルなど。

 作業を終えたものから、池田文庫の蔵書検索サービスで検索できるようになっていますので、ぜひご活用いただければと思います。劇場名、演目名、公演年、劇団、演出家などから検索可能です。

 

 今回はその中から、春を感じる資料をご紹介。下は祇園甲部歌舞練場の「都をどり」のプログラム群の一部です。池田文庫で所蔵しているのは、大正・昭和年間のものです。

 

 

 「都をどり」は、京都五花街の一つ、祇園甲部の芸妓さん・舞妓さんによる舞踊会。毎年4月祇園甲部歌舞練場で開かれ、春の京都に彩りを加えるイベントの一つです。

 1872年(明治5),京都博覧会で披露されたのが評判をよび、翌年からは歌舞練場で行われる恒例の舞踊会となりました。

 「都をどり」では、毎年ことなる歌題のもとで、舞台がつくられます。代々のプログラムを通じて、その伝統と挑戦の歴史に触れることができます。

 

 戦中・戦後に休演した6年をのぞいて、100年以上ものあいだ連綿と続いてきた「都をどり」ですが、昨年・一昨年は、新型コロナウイルスの影響で中止となってしまいました。

 今年は3年ぶりの開催。待ちわびていた方にとっても、芸妓さん・舞妓さんにとっても、万感の思いのこもった公演ではないかと思います。

 祇園甲部歌舞練場は現在耐震工事中ですので、今年はかわりに、南座で行われています。

 

[司書H]

阪急文化アーカイブズ「役割番付」の画像を公開

池田文庫が所蔵する芝居番付のうち「役割番付」の画像約4,800点を公開しました。
阪急文化アーカイブズ( https://www.hankyu-bunka.or.jp/archive/ )の検索カテゴリ「浮世絵・番付」の詳細検索項目「分類」で「番付/役割」を選択していただければ、該当画像がすべて表示されます。

役割番付は現代で言うならば演劇のチラシで、配役などを知らせるものです。池田文庫では「役者絵」(江戸~明治期)の考証を目的として収集されてきました。

役者絵は当時の人気俳優を描いたものですが、やはり現代的に言うならば公演ごとに発行されるブロマイドです。そこに上演年月や劇場といった詳しい公演情報はほとんど記載されていません。これらを教えてくれるのが役割番付なのです。

しかしそのためにはまず、番付をできる限り網羅的に揃えなくてはなりません。全体数が少なければ、目当ての番付(=公演情報)が見つかる可能性も低くなります。ですので、かつて池田文庫の職員は古書店を回っては番付を買い集めたそうです。その結果、特に上方の役者絵の考証に重点をおいていたこともあり、大坂の番付を豊富に揃えることができました。

役者絵と役割番付の例を見てみましょう。

これが役者絵です。2枚1組の絵の上部に「梅川 中山よしを」「忠兵衛 中村歌右衛門」とあるのは役名と役者名です。下部の「春好画」と「春蝶画」は絵師のサイン、つまり合作です。

梅川・忠兵衛といえば『恋飛脚大和往来』の主人公ですね。宝塚歌劇でも上演されています。
春好は大坂の浮世絵師 春好斎北洲、春蝶はその門人です。北洲の作画時期は文化・文政・天保期(19世紀前半頃)です。
この時期の中村歌右衛門といえば、上方で絶大な人気を誇り、江戸に下っても人気を博した三代目ということになります(実は役者絵は人気役者の似顔絵でもあるので、この顔を見ただけでも三代目とわかります)。一方の「中山よしを」は初代のことです。

この二人が共演する『恋飛脚大和往来』の役割番付がこちらです。

上下2段の枠の中には、役名と役者名、左にはスタッフも記されています。
そして欄外右端に、年月日と劇場が書き込まれていますので、この芝居が「子の正月九日より」「道頓堀角の芝居」で上演されたものとわかります。この「子」は文化13年(1816年)にあたります。

今ではデータベースで検索できるのが当たり前になっていますが、それが可能なのもこうした考証ひとつひとつの積み重ねなんですね。ちなみに池田文庫で考証の土台を築いたのはたまたま配属された阪急電鉄の社員でした。歌舞伎を見たこともなかったとか。その後専門家による調査が行われましたが、その土台は素晴らしいものだったそうです。これに関するエピソードは、土田衞「半世紀前の池田文庫」(『館報池田文庫』21号、2002年10月)などでも紹介されています。

池田文庫の本棚放浪記【第31回】~池田文庫の独自分類 ~宝塚歌劇編 その3・写真集グループ~

 今回は、池田文庫の宝塚歌劇関連の「図書」に属する資料群を池田文庫独自の分類をご紹介するシリーズの続きです。

 まずはおさらいから。池田文庫では、宝塚歌劇関連の「図書」に属する資料群を次のように分けています。(詳しくは第28回をご覧下さい。)

 

775-T/A          年史  (→第29回)

775-T/C          写真集

775-T/D          脚本をまとめた本

775-T/E          主題歌などをまとめた楽譜本

775-T/F          単行本

775-T/G          原作漫画

 

今回ご紹介したいのは2つめの「写真集」グループです。

 

池田文庫 生徒個人写真集グループの棚より

 

 

■写真集グループ(775-T/C)

 

 池田文庫にて、宝塚歌劇の写真集と分類されている本にはどんなのものがあるのでしょうか。このシリーズでたびたびご紹介してきた方法を、今回も使ってみましょう。

 詳細検索の請求記号欄に「775-T/C」~「775-T/C」と入力し、検索ボタンをクリックしますと、ズラリと出てきます。

 

 検索結果を見ていきますと、だいたい内容を想像できるようなタイトルもあれば、そうでないものも。一口に宝塚歌劇の写真集といっても、特集する対象はさまざまです。

 そこで、写真集の内容によって、おおまかに次の5つグループに細分しています。

 

775-T/Ca 生徒個人…          特定の生徒を特集した写真集。

775-T/Cb 演目・公演 …     「ベルサイユのばら」や「エリザベート」など、たびたび再演されてきた人気の演目を特集したものや、某年某月の特定の公演写真集など。(ただし、宝塚大劇場本公演の舞台写真集『Le Cinq』は「逐次刊行物」グループに属していますので、この範囲外です。)

775-T/Cb-K 海外公演 … 公演写真集のなかでも、海外公演については別個にグループをつくっています。

775-T/Cc 全体 … 特定の組や生徒を特集するのではなく、全体的な内容をもったもの。

775-T/Cd 組 …     花・月・雪・星・宙のなかで、特定の組を特集した写真集。

 

 グループに属する本の一覧を出すには、そのグループに付与されている記号を詳細検索の請求記号欄へ入力します。

 

 例えば、生徒の個人写真集のグループで試してみましょう。請求記号欄へ「775-T/Ca」~「775-T/Ca」と入力して検索ボタンをクリックすると、一覧を出すことができます。出版年順や書名順で並び替えることもできますし、調べたい年代で絞り込むこともできます。

 

 

 では、池田文庫で確認されているタカラジェンヌの個人写真集の中で、もっとも古い出版年をもつのは、いったい誰のものなのでしょうか。さきほどの検索結果を、古い順に並べかえて先頭にでてくるのが、その本ということになります。

 現在のところ、それは『小夜福子ポートレート』となっています。昭和10年(1935年)9月に刊行されました。90年ちかく前の写真集ということになりますね。

 

 小夜福子さんというと、戦前のレビュー黄金期に大人気を博したスター。小夜さんの写真が詩とともにレイアウトされ、抒情的な雰囲気ただよう写真集です。

 

 池田文庫は書庫に入っている本がたくさんあります。キーワード検索で、読みたい本がうまくヒットしなかったときは、ぜひこんな方法もつかって、思いがけない本との出会いも楽しんでいただきたいと思います。

 

 

(司書H)