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池田文庫の本棚放浪記【第29回】池田文庫の独自分類 ~宝塚歌劇編 その2・年史グループ~

 はじめる前に、ちょっとだけ前回(第28回)のおさらいです。池田文庫では、宝塚歌劇関連の「図書」に属する資料群を次のように分けています。

 

775-T/A          年史

775-T/C          写真集

775-T/D          脚本をまとめた本

775-T/E           主題歌などをまとめた楽譜本

775-T/F           単行本

775-T/G          原作漫画

 

この大枠の話で、前は終わってしまいました。今回から、いよいよ個々の資料群のご紹介へ入っていきたいと思います。

 

■年史グループ(775-A/A)

 宝塚歌劇団創立○十周年の節目の年に、それまでの歴史をまとめた本が出るのが、恒例となっているのはご存知でしょうか?

 これまでタカラヅカの歴史に言及した本はたくさん出版されてきました。しかしこれは、宝塚歌劇団による宝塚歌劇団の歴史の本。タカラヅカの調べものの定番アイテムの一つです。池田文庫では、あまりに頻繁に参照されるので、グループとして固めて配架しています。

 

 直近のものは、100周年だった2014年に発行された「宝塚歌劇100年史 虹の橋渡りつづけて」。ご覧になったことのある方は多いかもしれません。

 

 

 100年史は、「舞台編」と「人物編」の2冊構成です。

 「舞台編」は、宝塚大劇場、東京公演、バウホール、地方・海外公演等々の舞台記録集、賞歴、年表などを掲載しています。

 「人物編」は、1期生から99期生の生徒紹介に加え、スタッフ紹介、宝塚大劇場公演のポスター一覧、出版物紹介などが載っています。

 情報が見やすく整理され、抜群に使い勝手の良いデータブックです。池田文庫にあっては、タカラヅカの雑誌、公演プログラムなど、「当時の資料」にあたるための索引としても、とても役に立っています。

 

 100余年の歴史の中で出た年史は、もちろんこれだけではありません。

 20周年と40周年、以降は10年ごとに発行されてきました。新しい年史には、最新10年分の情報が加わります。だからといって、古い年史が用済みになるというわけでは、決してありません。「それを調べるには、○年史が便利」「○年史にしか載っていない」ということが、たくさんあるんです。

 

 

 たとえば草創期について調べたいならば、20年を1冊かけて語る20年史が、濃い情報をもっています。

 機関誌「歌劇」が休刊していた戦中期については、40年史や50年史の年表は、貴重な情報源です。

 写真から歴史をたどりたい方には、大きな図版がたくさん載った80年史が読みやすいかもしれません。

 

 ひとくちに年史といっても、それぞれに特色をもっています。

 知りたいことを詳しく載せているのはどれか。調べたいことに便利な形式をとっているのはどれか。古いものから新しいものまで、ぜひ一度手にとってみて、ご自身の調べものに合うものを見つけていただければと思います。

 

(司書H)

池田文庫の本棚放浪記【第28回】池田文庫の独自分類 ~宝塚歌劇編~

 池田文庫の所蔵する資料を調べるのに役立つ蔵書検索

 前回から、キーワードではなく、主題から本を探す方法を紹介しています。ちょっと専門的なお話になりますが、より深く池田文庫の資料を探索したいと思っておられる方の、ご参考になりましたら幸いです。

 

 池田文庫で特に収集に力を入れている「小林一三」「宝塚歌劇」「阪急」に関する本は、池田文庫ならではの独自分類をもとに細分化しているのは、前回ご紹介したとおり。

 今回からは、その中でも「宝塚歌劇」に関する本を、池田文庫ではどう分類しているのかをご紹介したいと思います。

 

 まず、宝塚歌劇関連資料を、大きく次の二つに分けています。

 

① 逐次刊行物

雑誌

公演ごとの発行物(プログラム、脚本集、主題歌集など)

 

② 図書

それ以外の資料

 

 「逐次刊行物」に属する資料がどんなものかは、イメージしやすいのではないでしょうか。

 こちらは、調べたい人物や事柄、演目、劇場、時代などからの検索が調べやすいと思います。池田文庫で作成している雑誌記事索引では、宝塚歌劇団の機関誌「歌劇」「宝塚グラフ」の、どの号にどんな記事が載っているのかも調べることもできます。

 

 問題は②の「図書」に属する資料です。こちらは具体的にどんなものがあるのか、わかりにくいと思います。キーワードがうまくヒットしなければ、本のタイトルの一覧をみて読む本を決めたい。そう思われるかもしれません。そんなときに試していただきたい方法をご紹介します。

 

 

 上は宝塚歌劇関連資料の棚より。これらの本の背ラベルの一段目はすべて「775-T」となっています。

池田文庫では宝塚歌劇関連と分類した資料には、「775-T」という分類記号を付与しているんです。

 

 さて、ここで池田文庫の詳細検索ページへ。分類コード欄のプルダウンメニューから「775-T」~「775-T」を選んで、検索ボタンをクリックすると、池田文庫で宝塚歌劇関連と分類した資料がズラリとでてきます。

 

 「図書」は1600件超と出ます。こちらは今後も増えていきます。数が多くて順に見ていくのは大変です。そこで、もう一段こまかい分類をお伝えします。

宝塚歌劇関連の図書を次のグループにわけています。

 

775-T/A          年史

775-T/C          写真集

775-T/D          脚本をまとめた本

775-T/E           主題歌などをまとめた楽譜本

775-T/F           単行本

775-T/G          原作漫画

 

例えば、年史グループの本の一覧を出したいとき。詳細検索ページの、今度は請求記号の欄に、775-T/A ~775-T/Aと入力してみて下さい。年史グループに属する本の一覧がでてきます。写真集以下の資料群も同様にそれぞれの記号を入力、検索すると、一覧がでてきます。

 ここで、それぞれの資料グループの紹介に入っていきたいところなのですが、今回はこのあたりで。次回につづきます。

 

 

(司書H)

池田文庫の本棚放浪記【第27回】池田文庫の独自分類 ~小林一三編~

 新型コロナウイルス流行のため、昨年より池田文庫は完全閉架式の図書館として運営しております。受付で利用したい資料を指定していただき、司書が出納する方式です。本を手にとって選びたいという方々にはご不便をおかけしておりますが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

 

 完全閉架式の図書館では、本と利用者をつなぐ蔵書検索(OPAC)は、ますます大きな存在です。

 調べたいことに関するキーワードでの検索は、まず試してみる方法かと思います。しかし、読みたい本が漠然としているとき、キーワードでうまくヒットしないとき、とりあえず開架の、思う本が並んでいそうな棚を見にいってみよう、と思われる方は多いことでしょう。

 

 ところが、完全閉架式ですと、そうした行動に移れません。そんなときにも蔵書検索をさらに活用してみてください。図書館の蔵書検索では主題から探すという方法も設けています。下は池田文庫の蔵書検索の詳細検索ページです。

 

 「分類コード」の欄をクリックするとプルダウンメニューがあらわれます。興味のある主題を選んで、検索ボタンをクリックしますと、池田文庫の蔵書の中で、その主題のもとに分類された本の一覧がでてきます。

 

 

 池田文庫では、蔵書の分類に、日本の図書館でひろく採用されている日本十進分類法をつかっています。

 ただし、特に収集に力を入れ、また閲覧の要望が多いテーマ「小林一三」「宝塚歌劇」「阪急」などには、独自の分類記号を付与し、細分化しています。

 

 下は現在封鎖中の池田文庫の開架より、小林一三関連の本を置いている棚の一部です。

 どの本にも背ラベルが貼ってあります。見えづらいですが、ラベルの上の段には「289-K」とあります。これがその独自の分類記号で、「289-K」は小林一三関連本のグループをあらわしています。

 

下は、その中から2冊。

背ラベルの1段目にはどちらも「289-K」となっていますが、2段目は、左はA、右はBと異なります。AとBの違いは、いったい何でしょうか?

 

答えは、次のとおりです。

…小林一三が書いた本のグループ

…小林一三について書かれた本のグループ

 

 ここで、さきほどの池田文庫の蔵書検索ページへ戻ります。今度使うのは「請求記号」の欄です。

 

① 小林一三関連本・Aグループに属する本の一覧を出したいときは、

289-K/A」~「289-K/A」と入力してください。

 

② 小林一三関連本・Bのグループに属する本の一覧を出したいときは、

289-K/B」~「289-K/B」と入力してください。

 

③ 小林一三関連本「289-K」全体を出したいときは、

289-K」~「289-K」と入力してください。

または先述の分類コード欄のプルダウンメニューから「289-K」を選択してもOKです。

 

 ただし、ほんの少し小林一三について触れている本などは、「289-K」グループではなく、他の主題グループへ分類されていますので、注意も必要です。

 

 阪急や宝塚歌劇の独自分類についても、いずれご紹介したいと思います。

 

 現在逸翁美術館では、池田文庫収蔵のポスターを中心とした展覧会を開催中ですが、ついでに池田文庫へ調べものに、と考えておられる方、ぜひ今回ご紹介した方法なども活用して、本を探してみてください。

 

 

(司書H)

 

池田文庫の本棚放浪記【第26回】~笑い泣き人生~

 朝の連続テレビ小説は、現在、大阪・道頓堀が舞台。主人公たちは、新しい喜劇を目指して奮闘中です。これを機に、日本の喜劇の歴史に注目された方も多いのではないでしょうか。

 

 今回ご紹介するのは、はじめて喜劇なるものを舞台にかけ、喜劇王の名声をほしいままにした曾我廼家五郎の伝記小説、『笑い泣き人生』をご紹介したいと思います。

 著者は、実際に五郎と親交のあった長谷川幸延です。

 

 

 この小説では、さまざまな人との出会いと別れが描かれます。その中でも、出会いが人をつくるということを、とくに強く感じさせるのが、曾我廼家十郎の存在です。

 

 喜劇に身を投じるまで、曾我廼家五郎は中村珊之助という歌舞伎役者でした。

 その珊之助が福井座という一座にいたとき、年長の仲間に中村時代という役者がいました。これが後の曾我廼家十郎です。二人は手を取り合い、新たに喜劇でやっていくという夢をめざします。

 そして明治37(1904)年2月、道頓堀・浪花座で、曾我廼家十郎・五郎一座の旗揚げへとこぎつけます。しかし折悪しく、日露戦争が始まります。号外が飛び交い、芝居見物どころではないという空気のなか、客を呼ぶにはどうするか。知恵をしぼって書き上げたのが『無筆の号外』。これを興行の途中から舞台にかけました。

 洋食屋の開店チラシを、文字の読めない人が号外と勘違いして受け取ったことからはじまる騒動を描いたこの芝居は、時局にマッチしていたこと、皿を次々に割っていくという演出の痛快さが受け、大当たりします。

 

 失敗と成功を繰り返しながら、二人は一座を人気劇団へ育てていきます。小説は、盟友でありながらライバルでもある、二人の複雑な心境をも描きます。

 

 実際に五郎は、十郎の芸風をこう評しています。「一見作意のない、ごく自然のままのようでいて、ふらりと舞台に現われると、もうそれだけでユーモアが舞台にあふれ出て、なんとも言えぬ妙味を漂わせる」。*

 その天才的な芸に、五郎は声をふりしぼったり、身振りを滑稽にしたりと、どぎつい演技で対抗しました。十郎の存在こそが、喜劇王・曾我廼家五郎の芸風を生んだというわけです。小説では、義太夫を習ってわざと声をつぶす、五郎の壮絶なまでの芸への執念が描かれます。

 

 対極の芸をもつ人気者の二人が両輪となって劇団をうごかしていく。理想的な関係にみえますが、芸風の違いは、やがて目指す喜劇の違いとなってあらわれ、袂を分かつことになります。

 相手を気にかけながらも、再び手を組むことはよしとしない。人情と芸の道とのはざまで揺れる五郎の複雑な心情は、この物語の読みどころの一つになっています。

 

 

さて、池田文庫では、曾我廼家五郎に関する上演資料や本人の手による絵や色紙なども所蔵しています。

 上の冊子は過去の展示の際に発行したもので、そのコレクションの一部を紹介しています。曾我廼家五郎の人生に興味をもたれた方には、こちらも、ぜひ手にとっていただきたいと思います。

 

*曾我廼家五郎「喜劇一代男」(「日本の芸談5」(九芸出版 1978年) 所収)

 

(司書H)

 

池田文庫の本棚放浪記【第25回】~愛しのタカラヅカへ~

 寒い日が続きますね。今年の読初めにはどんな本を選びましたか?

 こちらのコーナーの本年最初の一冊は、宝塚歌劇に関する本『愛しのタカラヅカへ』(1984)を選ばせていただきました。

 

 この本の著者・香村菊雄氏は、戦前・戦後に宝塚歌劇団で活躍した脚本・演出家です。香村氏が手がけた宝塚歌劇の作品には、中国の古い物語を下敷きにしたものが多くみられるのが特色です。

 後には、同じく宝塚を拠点にしていた男女混成の劇団、宝塚新芸座の座付作者となり、数多くの作品の脚本や演出の仕事を行いました。

 

 香村氏は、幼い頃から宝塚へ足繁くかよった、宝塚歌劇の熱心なファンでもありました。なんと大正3(1914)年の第一回公演も観たというのですから、最古参のファンの一人ですね。

 幼少期に夢中になったお伽歌劇。青年期に外国映画へ傾いていた心を、ふたたび宝塚へと引きもどした『モン・パリ』(1927)。その『モン・パリ』も色あせて感じたという『パリゼット』(1930)の衝撃。協同演出者として関わった戦後の大ヒット作『虞美人』(1951)のことなど。

 宝塚歌劇を長く見てきた人が語る思い出は、そのまま宝塚歌劇の歩みと重なりますので、読書を楽しみながら、宝塚歌劇の歴史まで学べてしまう本です。

 

 ですが、この本の魅力は、なんといっても年表の行間を埋めてくれるような話、当時を生きた人にしかわからない実体験にもとづく逸話の数々ではないかと思います。

 

 その中で一つご紹介するならば、戦後、接収が解けて宝塚大劇場が返還されてからの復興期のところでしょうか。

 当時は、誰もが物資不足に困っていた時代でした。観客にとって常に目新しい衣装や道具類を用意するのは容易ではありません。

 リフォームしたり、衣装倉庫に眠っている衣装を掘りおこしたり。限りある物資の中で、製作スタッフの創意工夫がありました。

 そして、修繕もままならず、すきま風が入る寒い稽古場で、稽古に励むタカラジェンヌたち。

 悪環境に負けない気概は、ふたたび大劇場で舞台をやれる喜びからも来ていたのではないでしょうか。おとろえない舞台への情熱、たくましさに感銘をうけたエピソードです。

 

 そのほかにも印象深いエピソードがいくつも登場します。

 この本の内容についてもっとくわしくお知りになりたい場合は、コチラに目次を載せていますので、どうぞご参考に。

 

 

(司書H)