阪急文化財団ブログ

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池田文庫の本棚放浪記【第11回】~宝塚よりあなたへ~

 ゴールデンウィークをいかがお過ごしでしょうか。今回は、多くの方のゴールデンウィークの思い出に残る場所、宝塚ファミリーランドに関する資料をご紹介します。

 

 宝塚ファミリーランドの歴史は、明治44(1911)年、箕面有馬電気軌道(現在の阪急電鉄)による宝塚新温泉の開業からはじまります。

 平成15(2003)年の閉園まで、温泉、劇場、動・植物園、遊園地などの施設をあつめ、さまざまな世代の人が楽しめる娯楽地として人気を博しました。

 

 宝塚新温泉内には図書館もあったんです。それが池田文庫の前身、宝塚文芸図書館です。

 建物はのちに宝塚歌劇の歴史の展示を行う宝塚歌劇記念館としても活用されましたので、そちらへは足を踏み入れたことがあるかもしれません。

 

 上はその文芸図書館が定期的に発行していた『宝塚文芸図書館月報』(昭和11(1936)年~昭和19(1944)年刊を所蔵)。

 演劇に関する記事や所蔵資料の案内が主ですが、時には新温泉内の他の施設の紹介や、昆虫館・植物園の利用客の関心に応えるために昆虫・植物に関する専門的な記事なども載せていました。

 

 より多くの方が「これぞ私の知るファミリーランド!」と感じるのは、むしろこちらの方かもしれません。『宝塚よりあなたへ』 (のちに『To you from Takarazuka』)、季節ごとに発行されていた宝塚ファミリーランドの情報誌です。池田文庫では昭和53(1978)年から平成5(1993)年のものを所蔵しています。

 次々行われる催し物や遊戯機の宣伝。大人形館や恐竜館なども紹介されています。

 動物園からは飼育レポート。ホワイトタイガーがはじめて動物園にやって来たとき、赤ちゃんが誕生したときは、誌面もおおいに盛り上がっています。

 四季折々の花だよりは、植物園から。夏には、池に人が乗れるほどの大きさのオオオニハスの葉が浮かんでいたことは覚えていますか?秋の菊花展も毎年の恒例でした。

 読むほどに、在りし日の宝塚ファミリーランドへと誘われてゆきます。これから生まれてくる令和の人たちと、宝塚にこんな風景があったことについて、いつか語り合ってみたいですね。

 

 

 折しも現在逸翁美術館で行われている展示は、「阪急沿線むかし図絵 大正・昭和のゆめとまち」。池田文庫開館70周年を記念し、当館所蔵品が展示されています。宝塚ファミリーランドに関する展示もあります。

 改元にあたり、にわかに旧時代への愛着が増したという方は、たくさんいらっしゃると思います。そんな方々にも、ぜひご覧頂きたい展覧会です。

 そして、美術館をご観覧のあとは、どうぞ池田文庫へもお立ち寄りください。阪急沿線にまつわる図書・雑誌類を手にとって、眠っていた記憶との再会を楽しんでください。

 

(司書H)

池田文庫の本棚放浪記【第10回】~宝塚おとめ~

 暖かく過ごしやすい季節になってきました。一方で、春は入学や入社など、人によっては環境が大きく変わる変化のときでもあります。期待と不安で落ち着かない日々を過ごしておられる方も多いのではないでしょうか。

 もしかすると、タカラジェンヌたちにとっても同じことがいえるのかもしれません。毎年3月に宝塚音楽学校を卒業した新しい顔ぶれが加わり、宝塚歌劇団の中にも変化が生じる時期だからです。そして、新入組にとっては初舞台の、5月頃行われる宝塚大劇場公演に先駆けて発売されるのが、ファンにはお馴染み『宝塚おとめ』です。

 この本には、その年度に宝塚歌劇団に在籍する全生徒の写真とプロフィールがまとめられています。

 観劇がより充実したものになるよう事前に目を通すという人もいれば、観終わった後に心惹かれた出演者をチェックする人もいるでしょう。観劇の友として、長きにわたり愛されてきた生徒名鑑なのです。

 

 さて、そんな『宝塚おとめ』ですが、はじめて発行されたのはいつ頃なのでしょうか。

 

 こちらが、最も古い『宝塚おとめ』です。昭和12 (1937)年12月に刊行されました。はじめは『宝塚グラフ』(現在の『宝塚GRAPH』)の臨時増刊号でした。この時は写真と名前のみですが、写真のフレームやレイアウトに工夫が凝らしてあり、目を楽しませてくれます。

 その後、年1回ペースで刊行されていきますが、昭和15年1月の刊行をもって、一旦ストップします。この昭和15年は、戦争の影響で機関誌『歌劇』や『宝塚グラフ』も休刊を余儀なくされた年でした。次の『宝塚おとめ』の刊行が見送られたのも、やむをえない状況だったといえます。

 

 終戦後は、宝塚歌劇団も休止していた機能を徐々に回復させていきました。宝塚大劇場公演の再開に、機関誌の復刊、日本劇場における東京公演の再開・・・そんな復調ムードのなか、7年ぶりに刊行されたのが下の『宝塚おとめ』 (昭和22年5月刊)です。

 

 きっと手にした人々は、宝塚歌劇を存分に楽しむことができる時代の到来を実感したことと思います。この時から現在まで、途絶えることなく刊行を重ねています。

 

 池田文庫では、昔のものから新しいものまで、歴代の『宝塚おとめ』をまとめて通覧できます。かつての観劇の友は、今度は調査の友として活用されています。

 笑顔のタカラジェンヌたちが並ぶページの向こうにあるのは、宝塚歌劇団の年表上には現れてこない膨大な個人史の気配。

 人生のひとときを宝塚の舞台に賭した彼女たち一人一人のドラマを想像すると、宝塚歌劇の歴史がいっそう深遠なものに感じられてきます。

 

(司書H)